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「え、え、…え」 顔が一気に真っ赤になるのが分かる。 首元に河木くんの柔らかい髪が当たって擽ったい。 「ごめんね」 「……え?」 「別に嫌な事があった訳じゃないんだ」 穏やかな口調で一つ一つの言葉を丁寧に言っていく河木くん。 その優しい口調がいつもより近い距離で聞けてる事に胸がドキドキした。 「……嫉妬」 「へ?」 「……また、涼さんに嫉妬しちゃった」 眉を下げながら困ったように笑う河木くん。 “ 嫉妬”という、思いもしなかったワードに僕は頭が追いついてくれない。 「な、…何で…し、嫉妬…なんか」 「…あの日と一緒、涼さんの事を考えてる羽野が嫌になった」 顔が茹でダコになってしまうんじゃないかと思うほど、顔に血が上るのが分かる。 (あ、あの日って……か、河木くんがキス……した時だよね?) その日と同じ感情って…… 益々、心臓も頭も心も何もかもが追いついてくれない。 きっと僕は間抜けな顔をしているだろう。 河木くんが少しだけクスッと笑う。 「今、羽野の心を占めてるのは…一体誰?」 少しだけ艶めいた瞳で聞かれた質問に、胸がキューっとなる。 (……そんなの、一人しかいないに決まってる…) 「今この瞬間だけじゃなくて……ずっと……僕の心は、河木くんで…いっぱいだよ」 河木くんがいなくなった世界なんて、もう考えられないんだ。

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