323 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
(夏喜side)
クリスマスイブ、当日。
「うわ…めっちゃ混んでる」
辺りは体を寄せ合うカップルばかり。
(実質、クリスマスよりイブの方が人多そう…)
俺の独断と偏見だが、そう思ってしまうのは今日、俺が羽野とデートするからだろう。
「おーい!」
(…!?)
声のした方に顔を向ける。
(…あ、違う人……)
羽野じゃない事に肩を少しだけ落とし、小さくため息を付いた。
そして、そんなことを先程から永遠と繰り返している…
(こんな早く来るわけないのに…)
近くにある時計をチラッと見た。
絶賛、羽野と待ち合わせする30分前……
「……はぁ」
俺がここに来たのは、今から更に30分ほど前だ。
つまり、30分間誰かが待ち人を呼ぶ声に惑わされ続けてるってこと…
(どんだけ俺、楽しみにしてんだよ……)
極端な自分の行動にまたため息を付いた。
「あ…あの、」
さっきよりも近くで聞こえた声に、反射的に振り向く。
(…え?)
「ほら、ちゃんと言いなよ」
「やっと、話しかけられたじゃん!」
「ずっとここで立ってたんだから、大丈夫だって!」
そう言ってるのは、話しかけてきたであろう女の子の周りを取り巻いてる、女の子三人組…
「え、…えっと…良かったら…その…こ、この後……」
真ん中にいる女の子が頬を赤らめながらおどおどと話し出した
その時、
「か、河木くん!」
間違いないであろう、待ち侘びていた声の相手に今まで以上に早く首を向ける。
(…うわ……)
想像していた何倍も…いや、何十倍も可愛らしい格好をした羽野は、俺の心を一瞬にして自分の方へと向けてしまった。
ともだちにシェアしよう!