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(夏喜side) クリスマスイブ、当日。 「うわ…めっちゃ混んでる」 辺りは体を寄せ合うカップルばかり。 (実質、クリスマスよりイブの方が人多そう…) 俺の独断と偏見だが、そう思ってしまうのは今日、俺が羽野とデートするからだろう。 「おーい!」 (…!?) 声のした方に顔を向ける。 (…あ、違う人……) 羽野じゃない事に肩を少しだけ落とし、小さくため息を付いた。 そして、そんなことを先程から永遠と繰り返している… (こんな早く来るわけないのに…) 近くにある時計をチラッと見た。 絶賛、羽野と待ち合わせする30分前…… 「……はぁ」 俺がここに来たのは、今から更に30分ほど前だ。 つまり、30分間誰かが待ち人を呼ぶ声に惑わされ続けてるってこと… (どんだけ俺、楽しみにしてんだよ……) 極端な自分の行動にまたため息を付いた。 「あ…あの、」 さっきよりも近くで聞こえた声に、反射的に振り向く。 (…え?) 「ほら、ちゃんと言いなよ」 「やっと、話しかけられたじゃん!」 「ずっとここで立ってたんだから、大丈夫だって!」 そう言ってるのは、話しかけてきたであろう女の子の周りを取り巻いてる、女の子三人組… 「え、…えっと…良かったら…その…こ、この後……」 真ん中にいる女の子が頬を赤らめながらおどおどと話し出した その時、 「か、河木くん!」 間違いないであろう、待ち侘びていた声の相手に今まで以上に早く首を向ける。 (…うわ……) 想像していた何倍も…いや、何十倍も可愛らしい格好をした羽野は、俺の心を一瞬にして自分の方へと向けてしまった。

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