325 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「あ、あの…ごめんね」
「え?」
いつまでそうしていただろうか、
手を握ったまま、無言で歩き続けていた俺を止める羽野の声。
「…お、女の子…可愛かった……のに、…」
羽野は一体、何が言いたいんだ?
「羽野は、俺があの子と一瞬にクリスマスデートをしたらいいと思ったの?」
俺の問いかけに羽野はブンブンと首を横に振ってくれる。
「…お、俺なんかより……あの子といた方が……い、癒されたり…したんじゃ……」
思わずため息をついてしまう。
“ 癒される”って一体なんの事だ?
それに、別にあの子のことを特別“ 可愛い”だなんて思わない。
俺にとったら、よっぽど羽野の方が…
「……可愛いのは、羽野だよ?」
「!?!?」
羽野の顔が真っ赤っかに染まる。
「癒されるって意味はよく分かんないけど…少なくとも俺が一緒にいて、癒されるのは羽野だし」
羽野の髪をサラッと撫でた。
「今日なんか…その、……いつもより可愛くて…ドキドキしてる」
誕生日会以来見てなかった羽野の私服だけど、クリスマス仕様で…
髪の毛なんかも上げていて
心臓がさっきから煩くて、痛くて堪らないんだ。
「…ほ、ほんとに?」
羽野の声のトーンが少しだけ上がった。
「……ホントだよ」
段々と恥ずかしさが募ってきて、思わず目を背けてしまう。
「…そっか、うん…そっか…」
いつもの声色より、明るくて照れてる様な声。
「………やった」
「!?!?!?」
いつもは言わないであろう、そんな可愛い小さな呟きに俺は
(……今日、耐えきれんのかな……)
楽しみだったはずのクリスマスデートに、少しだけ不安が募った、待ち合わせ場所のおよそ10分前……
ともだちにシェアしよう!