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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈

「あ、あの…ごめんね」 「え?」 いつまでそうしていただろうか、 手を握ったまま、無言で歩き続けていた俺を止める羽野の声。 「…お、女の子…可愛かった……のに、…」 羽野は一体、何が言いたいんだ? 「羽野は、俺があの子と一瞬にクリスマスデートをしたらいいと思ったの?」 俺の問いかけに羽野はブンブンと首を横に振ってくれる。 「…お、俺なんかより……あの子といた方が……い、癒されたり…したんじゃ……」 思わずため息をついてしまう。 “ 癒される”って一体なんの事だ? それに、別にあの子のことを特別“ 可愛い”だなんて思わない。 俺にとったら、よっぽど羽野の方が… 「……可愛いのは、羽野だよ?」 「!?!?」 羽野の顔が真っ赤っかに染まる。 「癒されるって意味はよく分かんないけど…少なくとも俺が一緒にいて、癒されるのは羽野だし」 羽野の髪をサラッと撫でた。 「今日なんか…その、……いつもより可愛くて…ドキドキしてる」 誕生日会以来見てなかった羽野の私服だけど、クリスマス仕様で… 髪の毛なんかも上げていて 心臓がさっきから煩くて、痛くて堪らないんだ。 「…ほ、ほんとに?」 羽野の声のトーンが少しだけ上がった。 「……ホントだよ」 段々と恥ずかしさが募ってきて、思わず目を背けてしまう。 「…そっか、うん…そっか…」 いつもの声色より、明るくて照れてる様な声。 「………やった」 「!?!?!?」 いつもは言わないであろう、そんな可愛い小さな呟きに俺は (……今日、耐えきれんのかな……) 楽しみだったはずのクリスマスデートに、少しだけ不安が募った、待ち合わせ場所のおよそ10分前……

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