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(冬麻side)
「じゃあ、気を取り直して行こっ」
河木くんはニコッと笑いそう言うと、手を離さずにそのまま歩き出した。
(て、手……)
てっきり離すものだと思っていた僕はドキドキを抑えられずにいる。
いつもの僕なら手を離さないのか聞くけど…
(離したくない…なぁ……)
たとえ、河木くんが無意識にそうしているとしても、まだそうしていたいから…
「どっか寄る?」
「あ、ど…どこでもいいよ?」
「うーん、じゃあカフェとかどう?」
「行きたい…!」
もう少しだけ甘えていよう。
┈┈┈┈┈┈┈┈
カフェにつき、座席へと座ると僕はココア、河木くんはコーヒーを頼んだ。
「…す、凄くオシャレだね……」
河木くんに連れられて来たカフェは、クリスマスイブにも関わらず、人もそこまで多くない隠れ家的カフェ。
外見はちょっとしたイルミネーションが飾られており、店内もクリスマス仕様の赤い靴下が沢山飾られたオシャレな店だ。
「ここ良いでしょ?前に蓮に連れてこさせられたんだ」
「風隼さんに?」
「そう、なんかケーキが美味しいらしくて、一人で行くのは気が引くから着いて来いって来させられた(笑)」
ケーキ…
甘党で何となく…食に厳しそうな風隼さんが行きたかった店だなんて…
絶対美味しいに決まってる
「食べたい?」
「へ!?」
まるで、考えた事が全て河木くんに伝わってるかのようにタイミングよく聞いてくる河木くん。
「俺、甘いの苦手だけどさ、こういう雰囲気の店、羽野好きそうだし…蓮が頼んだケーキも可愛くてオシャレだったからさ、…来た時に、食べさせてあげたいなぁって思ってたんだ」
河木くんの声が最後の方で少しだけ小さくなる。
(それって、風隼さんに連れられた時に、僕のことを思い浮かべてくれたんだよね?)
他の、甘いものが好きな女の子や男の子ではなく、僕のことを…
それだけで心が豊かになってしまう。
「食べたい…」
僕が小さくそう呟くと、河木くんはニコッと微笑んだ。
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