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河木くんがびっくりしたように、口をポカーンと開けている。
(…あ、や…やらかした?)
自分が必死になって力説してしまっていたことに気づき、途端に気持ちが焦り出す。
(…い、いやいや…いくら勘違いされてたからって、す、好きでもないやつにこんなこと…)
さっきとは違う意味で顔が真っ赤になっていく。
恥ずかしすぎて、河木くんの顔がまた見れない…
「…やべぇな……」
「……え?」
無言だったから聞こえた小さな小さな呟きに、思わず見れていなかった河木くんの顔を見る。
「ちょ…今、見ないで」
そこには、腕で顔を隠し首元が真っ赤に染まっている
見たことも無い河木くんの一面。
「…俺…絶対いま、顔やばいから」
か、顔がやばいって……
(か、かっこ良すぎてやばいと思ったことはあるけど…そ、そういう意味じゃないもんね…)
そっと顔を隠していた腕を外し、そのまま顔をパタパタと仰ぐ。
(…顔まで真っ赤……)
また、胸がきゅんっと高鳴った。
「お待たせ致しました…」
突然の声に肩がビクッと跳ねる。
「…あ、」
声の方に視線を向けると何故かサンタクロースの格好をした、先程の店員さん…
「ショートケーキでございます…サンタも添えて」
あ、サンタクロースがついてるって…そういう…
「ふはっ、やべぇ(笑)サンタクロースがついてくるってそういうこと!?(笑)」
河木くんも僕と同じことを思ったのか、お腹を抱えて大笑い。
「はい、クリスマス限定でやっております」
て、店員さんもサンタの格好して、よく普通に対応出来てるな……
「めっちゃいいですよ、そのサービス!(笑)なぁ、羽野?」
「え、…あ、うん。…げ、元気になれます」
突然話を振られて変な答え方をしちゃったけど、店員さんは「ありがとうございます」と嬉しそうに笑ってくれた。
「では、ごゆっくり…」
最後にサンタな店員さんはお決まりの言葉を言い、そっと立ち去る。
頼んだケーキには、小さなサンタクロースが添えられていた。
「こういうサービスってワクワク出来て楽しいね」
河木くんが嬉しそうに問いかける。
「う、うん。…まさか、サンタクロースの意味がこうとは思わなかったけど…」
「それは思った(笑)」
「可愛いケーキだなぁ」なんて河木くんが微笑みながらケーキを眺める。
前だと考えられなかった、空間だよな…
河木くんに可愛いと言われたケーキをじっと見つめる。
(確かに可愛い…)
ケーキにちょっとした嫉妬を感じながら、僕はそれを一口食べた。
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