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(夏喜side)
羽野の口から「東風ツリー」というワードを聞き、思わず心臓がドキンっと高鳴ってしまう。
いくら、涼さんに羽野が東風イルミネーションを見たいと聞いたからって、何も考えずここに来たわけじゃない。
恋愛に鈍いと散々蓮に言われまくった俺でも、東風イルミネーションのジンクスぐらい知っている。
東風ツリーのジンクスについても…
だから、俺はクリスマスデートの場所をここに決めたんだ。
「あ、ここは空いてる…」
「もうちょっと遅くなってから人が増えるのかもね」
東風ツリーに集まる時間は、イルミネーションが終わる頃。
だから、人はまだそこまで多くない。
「ねぇ、近くで…見てきても…」
「うん、もちろん良いよ」
俺の返事に羽野の顔がぱあっと明るくなった。
(別に許可なんかいらないのに…)
羽野にとっては、これが普通なのだろう。
羽野が少し駆け足ぎみにツリーの前へと向かう。
その瞬間、
「「わぁぁぁぁぁ!」」
ツリーのライトが七色に光り輝き、辺りを華やかに彩る。
1時間に一度、ツリーが別の輝きへと変わる瞬間。
周りで見ていたカップル達も中々見れない瞬間のツリーに目を奪われてるようだった。
けど、俺は…
ドキンッ
美しく輝き出した七色のツリーよりも
辺りを彩る光の輝きよりも
何倍にも
(…綺麗)
ツリーを儚げに見つめる、羽野の方が美しいと感じた。
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