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(冬麻side) ふらつきながらも、今出せる精一杯のスピードで無我夢中に走る。 (…なんで) 『なぁ!冬麻の噂、聞いたか!?』 (…なんで) 『マジで!?やべぇ奴じゃん(笑)』 (なんで…) 『冬麻くん、狙ってたのになぁ…ショックすぎるんだけど…』 (なんで、アイツらが…) 『うわ!お前ら女子、友達のフリして彼氏枠狙ってた訳!?こえぇぇぇ(笑)』 (考えたくない…) 『まぁ、あんな完璧人間いたら怖いよな…』 (……思い出したくない) 『どっか裏があると思ってたんだよねぇ』 (苦しみたくない……) 『アイツの人生終わったな?(笑)』 「いっ…」 頭が割れたみたいに、ガンガンと頭痛が襲う。 心臓が嫌な音をたて、苦しくて痛くて辛くて… さっきの幸せな胸の痛さでは無い。 心の奥底にある柔らかい部分を抉られるような痛さ。 (助けて…) 涙がどんどん溢れてくる。 (見捨てないで…) 視界が涙のせいで全く見えない。 (一緒にいて…) 足が縺れそうになりながら、どこえ向かっているのか…、体が進むままに自分を委ねる。 「はぁ…はぁ……」 涙で歪んでいた世界が更に曲がりくねる。 (…やばい) 目の前がチカチカと光り、息さえもままならない。 この状態がヤバいことを、僕は知っている。 けど… (もう無理…) 足を止めるとこも息を吸うことも心を落ち着かせることも… もう、僕には…… 「…冬麻!?」 視界が完全に暗黒へと包まれかけた時、後ろからいつも聞いていた柔らかい声が耳に入る。 「おい!?どうした!!」 (涼……) 僕の過去を知り、守ってきてくれた人の姿を捉え安心のあまり体ごと崩れ去っていく。 そして、ようやく周りの景色が目に入り、無意識のうちに走り続けて着いた場所は 涼のアトリエ前だった。

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