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(涼side)
色々なことがあり、疲れ果てたのか冬麻はアトリエのベッドの中で眠ってしまった。
「………」
眠る冬麻の眼鏡をそっと外し、いつもより上がっていた前髪を横に分ける。
美しい宝石を隠すように閉じられた瞼には、僅かに残る火傷の跡。
優しくそこを撫でては、胸がズキンと痛み出す。
「…大丈夫、大丈夫…だから……」
冷たく凍りそうな手を温めたくてギュッと握っては、無意識のうちにそんな言葉を唱えてしまう。
どうか、眠っている間だけでも…夢の中だけでも苦しみから逃れて欲しくて
過去から解放されて欲しくて、握りしめた手を自分の胸にそっと当てた。
┈┈┈┈┈┈
ピンポーン
どれぐらい、そうしていただろうか
静かだった部屋に、誰か来たことを告げるチャイムが鳴り響く。
一体誰が来たのか…
重い足に力を入れ、立ち上がるとそのまま冬麻の頬を優しく撫で、玄関へと向かう。
どうせ、作品の進み具合でも美術館のスタッフが見に来たのだろうと勝手に決めつけ、誰かも確認せず扉をおもむろに開けた。
のだが、
「……え?」
予想もしなかった相手に思わず声を漏らしてしまう。
「…ごめんね、涼くん」
俺の目の前には、そう言って申し訳なさそうに眉を下げる蓮と陽斗…
そして、つっきーの姿があった。
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