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(涼side)
つっきー達がやってきたことを告げると固まる冬麻。
いつもは表情が分かりにくい冬麻でも、眼鏡もなく、前髪も上げてしまえば不安なことは一目瞭然だった。
「大丈夫か?」
「…大丈夫だよ」
(…嘘)
目がゆらゆらと揺れている。
嘘をつくのが下手なと冬麻は、誰よりも正直に生きてきた。
そんな奴の嘘…ましてや、中学生時代一緒にいた俺が惑わされるわけない。
冬麻が不安だと言うなら、今すぐにでも帰らせることは可能だ。
けど…
「…たぶん、お前の過去、聞きに来たんだと思う」
今の冬麻が、そう言うだろうか。
帰らせることを、本当に冬麻は望んでいるのだろうか。
冬麻の目が俺の目をじっと捕える。
俺も逸らさずに、冬麻の目を見続けた。
ふぅ…と小さく冬麻が息を吐く。
そして、瞼を閉じ、開いた瞳には
さっきの不安な色は消えていた。
「…いいよ」
「え?」
冬麻が俺の手をギュッと握る
「もう、逃げちゃダメなんだ」
そう言う冬麻は、今まで見た中で一番強く
誰よりも大きく見えた。
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