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「…会社の跡継ぎ?」 授業のことは一旦忘れさせ、俺の隣に座らせる。 「…そう、俺に跡継げって」 ボソッと呟くように言うと、冬麻は悲しげに笑った。 「ま、分かってたことだし、拒否権なんかないんだけどね」 ほら、まただ 冬麻は直ぐに守りに入る。 それも無意識のうちに 家柄の事となると余計にだ。 「って、ほら!授業!!」 少しの間も許さないかのように、直ぐに話を切り替える冬麻。 「…げ」 「げっ、じゃない!!」 さっきのまでの悲しい笑顔が嘘のように、太陽のような この古びた資料室に差し込む光のような眩しすぎる笑顔。 その笑顔が綺麗で可愛いくて、痛くて苦しくて 俺の心をいっぱいにさせるんだ。 「ほら!」 「…ちょっ」 俺の腕を引っ張りながら、資料室を出ると、チャイムの鳴る少し前のザワついた廊下を走り抜けていく。 視線をかっさらっていく。 冬麻のことなど何にも知らない、本能と欲望を抑えきれてない汚い視線を浴びていく。 (…だから、教室には行きたくない) そんな俺の気を知ってか知らずか 「おー!涼連れてこれたのかよ!」 「苦戦しすぎだろ(笑)お前」 「わりぃかよ、涼全然起きてくんねぇから(笑)」 いつものように、クラスメイトと仲良さげに肩を寄せあって話し出すんだ。

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