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夏の暑さも本格的になり、夏休みに入った。
ようやく誰とも関わらなくていい環境に落ち着いたのもつかの間
「海行こーぜ!海!」
「いいね!!いこいこ!」
「夏休みパラダイスだぁ!!」
(…うるさい)
夏休みで騒がしさが増したクラスの奴らからの通知が止まらない…
新しい作品もこの時期に仕上げてしまいたいが、これだけ騒がしくされてしまえばやる気も起こらない訳で…
「…めんどくせぇ」
持っていた筆を思いっきし投げた。
「……はぁ」
近くのソファに寝っ転がり、目元に腕を当てる。
(……来ねぇ)
先日から展覧会のマネージャーが騒がしく行き来してる扉をじっと見つめる。
もちろん、今来て欲しいと願っている相手はマネージャーでは無い。
(いつもだったら絶対来んのに…)
そう、待ってる相手は家からの避難場所として俺のアトリエに来る、サザンカのこと。
何か予定が入ってるのかもしれないが、連絡にマメな冬麻は全部俺に何故か伝えてくる。
…多分、冬麻が来ない日に作品が完成して欲しくないからなんだろうけど
それに、誰かと遊ぶということも今までで一度もなかった。
グループで行くとなると必ず俺を誘ってたし、一体一で遊ぶというのも考えにくい…
(…いや)
たった1人、考えられる相手がいる。
最近冬麻と親しくて…2人で遊びに行きそうな相手
そいつの事が頭に浮かんだ瞬間、心臓が嫌に鳴り響く。
急いで冬麻に電話をかけるが出てはくれない。
焦る気持ちを落ち着かせ、もしかしたら違うかもしれないと願いを込めながらスマホでホテルkounoについて調べる。
が…
「………マジかよ」
そこには間違えなく、ホテルkounoの跡取り息子として
‘香山 峻’の文字
そして、俺と同い年の文字が書かれていた。
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