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「…涼…くん?」 その声にハッとし、振り返る。 そこには、上品は格好でこちらを見る女の人。 「優子…さん」 「やっぱり、涼くんじゃない」 嬉しそうに微笑み、俺の元へ駆け寄ってくるその人は冬麻のお母さんで俺の元アシスタントさんだ。 「久しぶりねぇ、何年ぶりかしら」 「…2年、ぶり…ですかね」 「そうそう、冬麻と一緒にあなたの展覧会を見に行った以来よ」 俺が絵を出し始めた当初からアシスタントととして傍に着いていてくれた優子さん。 中学に入り、アシスタントでは無くなったが1度、まだ話したことのなかった冬麻を連れて展覧会に来てくれたことがある。 その時は、まだ冬麻が俺の絵を好きだって知らなかったんだっけ… 「…冬麻に会いに来たの?」 家の前で立ち尽くす俺に少しだけ悲しそうな表情を見せた優子さんだったが、俺は素直に首を縦に振った。 「こんな家になっちゃったけど…良かったら上がって」 「え、…良いんですか?」 てっきり追い出されるかと思っていた手前、想像していなかった展開に首を振っといてなんだが、本当にいいのか 思わず聞いてしまった。 「そりゃ良いわよ!涼くんは冬麻のお友達なんだから」 “友達” 今でもそう、思っていてくれている。 誰が冬麻と家をこんな目に合わせたのか、確証も着いていない危ない時なのに この人は俺を信頼してくれている。 「ありがとうございます…」 その事実が嬉しくて、アイツらとは違うと言ってくれてるようで 緩みそうな涙腺を抑えながら、深くお辞儀をした。

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