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第16章 heart~心~
(夏喜side)
「………」
言葉が浮かばなかった。
羽野の過去には俺が触れられない傷があると感じてはいたけど、それは想像するよりもずっと深くて
消せないものだと
怒りを抑えながら淡々と話す涼さんを見て痛感させられた。
それは、隣で涙を浮かべる陽斗も唇をグッと噛む蓮も同じようで
部屋は時を刻む、時計の音だけが静寂を包み込むんだ。
「これはあくまで、俺が知る事実」
黙る俺達に涼さんは静かに話を続ける。
「結局、そいつの…香山 峻の目的は分からないし、火傷の怪我だけで済んでるのか…分からない」
「…というのは」
蓮が口を開き、涼さんを真剣な目でじっと捉える。
「…分からないけど、性的暴行だってされてる可能性もゼロではない」
「!?」
ガタンッ
思わず、机を押しその場を立ち上がる。
陽斗と蓮は驚いたように目を大きくさせたが、涼さんは至って落ち着いてるように見えた。
「とっきー、落ち着いて」
(落ち着いて?そんなの…)
「冬麻が起きるかもしんねぇから」
涼さんはそう言うと、扉を首でクイッと指す。
俺はその場に座ると涼さんが指した扉をじっと見つめた。
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