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(冬麻side) 見たことある風景に感じたことのある蒸し暑い部屋 『お、いい子まわしてくれたんじゃね?』 『今回は当たりだな(笑)』 (誰?) ただ立ちすくむ僕に気付いてないのか、男たちはある一点に目掛けて足を進める。 『ちょーいい匂いすんじゃん』 『早くやっちまおうぜ』 ドンッ 誰かに押され、倒れ込む人。 その人の顔は男たちに隠れて見えない。 (…何やって……) 『お、峻から電話だ』 「…っ」 何をしてるのか覗き込もうとした瞬間、 突然出た名前に身体が一気に強ばる。 (…峻?) 『どうする?出る?』 『いや、出なくていいだろ』 聞き覚えのある会話に徐々に思い出していく光景。 『…峻?』 倒された人物が、発した苦しそうな声。 目線をやるとそこには 僕がいた ┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 「っはぁはぁはぁ…」 飛び起きるとそこは、見覚えのない部屋。 絵の具の独特な匂いが漂い、自分の部屋ではないことに気づく。 一瞬、どこか分からず不安に駆られたが、近くに置かれてる絵で涼のアトリエだと思い出した。 (…しばらく見てなかったのに) それまでの日々や同級生に言われたことを思い出すことはあった。 けど、ハッキリとあの日を…あの光景を思い出すのは、久しぶり ましてや、夢を見るなんて… 「…もう、話したかな」 頭に浮かぶ、河木くんのキラキラとした笑顔。 その笑顔も、もう見れないかもしれない。 (目に火傷なんて…引かれたかな…) 不思議だ、今までだと過去にばかり怯えていた。他人から干渉されるのを恐れたり、出来るだけ一人でいたいと怖がっていたのに 今じゃ、あんな夢を見てでも、河木くんから嫌われる事を一番に恐れてしまう。 出来れば、河木くんと一緒に居られる最後は、笑顔を見せて欲しかったな… そう思うと、少しだけ寂しくなって、僕はもう一度布団を被った。

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