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「ねぇ、涼」
「…ん?」
おにぎりを食べ、作成途中だった絵と向き合っていると、冬磨が俺の隣に座る。
「タチアオイの絵、描かないの?」
(…タチアオイ…ねぇ)
「描く予定はないけど、なんで?」
気になって聞いてみると、単純に「好きだから」と答える冬磨。
(やっぱ、タチ悪…)
こりゃ、つっきーも苦労するなぁ
そんな他人事に考えながら手を進める。
「それに涼、タチアオイって実は薬草なんだよ」
なんの前振りもなく、そんな事を言うから思わず手が止まってしまった。
「…え?」
「だからって言うのも変…だけど、」
作品から目を離し、俺の目を見る冬磨。
「涼は俺にとって、心の修復薬だよ」
(……何それ)
「ぶはっ(笑)」
「へ?」
「いや…心の修復薬って…なに?(笑)」
かなりのドヤ感で言ってきた冬磨に思わず笑ってしまう。
中学の時でも、イケメン発言はあったかもだが、ここまでキザっぽいのは初めてだ。
「せ、折角涼を元気づけようと思ったのに…」
「…え?」
ジワジワと来る笑いの波を押さえ込んでいると、拗ねた顔を見せる冬磨の発言に、少し心を落ち着かせ耳を傾ける。
「…また少し…寂しそうな顔したから…」
胸がまたドキッとなる。
口を尖らしながら言う冬磨は、きっとキッチンでの事を言ってるんだろう。
(…そんな、顔に出てたっけ…?)
つっきーの事で、少し気持ちが下に向いた…というか、改めて感じただけなのに
「どうせ、自分に出来ることは何も無いとか…思ってるんだろうなって…」
「……」
図星すぎる発言に口を開けていると、次は冬磨が俺の顔を見て微笑んだ。
(あ、…また笑った)
「僕だって…涼のことぐらい分かるんだから」
その発言にまた、胸がドキッとする。
はぁ、本当にタチが悪い…
その発言もその表情も何もかも
「…こりゃ、苦労するわ…」
「…え?」
先程も思ったことを口にすると、頭に?を浮かべる冬磨。
「ふふっ、何でもない」
そう言い、微笑み返すとまた一つ、頭に?が増えたようだった。
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