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「夜中にごめん、…おやすみなさい」
「おやすみ」
最後にそう言葉を交わすと、冬磨は部屋に戻っていく。
俺も、頑張って起きあげていた体をソファに落とした。
(……眠)
ようやく寝られると思い、目を閉じる。
先程よりも早く深い眠りの波が襲い、意識が無くなりかけた
…その瞬間
プルルルル プルルルル…
(…最悪)
一気にまた現実へと戻す着信音。
マナーモードにしとけば良かったと後悔するが、重要な仕事案件かもしれないので無視は出来ない…
「…はい」
誰からかも確認せず、電話に出ると
『涼くん?私、優子だけど』
「ゆ、優子さん!?」
中学以来の思いもしなかった相手にピークだった眠気も一気に吹き飛んだ。
「え、なんで優子さんが俺の番号を…」
『旦那に聞いたのよ(笑)』
親父さん…
『どう、元気にしてる?』
「はい、元気ですよ」
こんな夜中にそぐわない挨拶をし合い、何の用か分からなくて聞こうとすると
『ごめんねこんな夜中に電話して』
「いえいえ、ちょっとビックリしましたけど…」
『どうしても、涼くんに伝えなくちゃいけないことがあって』
伝えないといけない…こと?
『今じゃなくても良かったんだけどね…』
それは一体何についてかが気になる。
冬磨についてなのか、作品についてなのか…もっと違う用事なのか
「…良いこと、ですか?」
恐る恐る聞いてみると優子さんは
『えぇ、あなたにとって悪い話じゃないと思うわ』
明るいトーンで、そう伝えてくる。
一体なんの事かと、頭の中で予想していると
クスッと笑った優子さんは、そのまま言葉を続けた。
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『……どう?悪い話じゃないでしょ?』
「…はい」
確かに、悪い話ではない。
けど…
「少し考えさせてください」
『そうね…まだ時間はあるし、ゆっくり考えて。私は良いと思うけど…決めるのはあなただから』
電話越しだが、思わず軽く会釈をしてしまう。
「じゃあ」と最後に軽く挨拶を交わし、電話を切ると、そのままソファに体を沈ませた。
「…はぁ」
ほんとに、今日は色々なことが起こりすぎだ。
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