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机に項垂れる僕を見て涼はクスッと笑い、食べ終わった食器達を台所に持っていく。
今送ったばかりのメッセージを眺めては、まだ見ていないにしろ今、河木くんのスマホの中に自分の言葉が入っていると思うと心臓が一気に高鳴り出す。
「…うううぅ」
普通に会話する時とはまた違う、言い表せない甘酸っぱい感覚に足をバタバタさせた。
「羽野さーん?そこで一人青春してないで、洗うの手伝ってくれませんか?」
顔を上げると苦笑いをする涼。
流石に、足をバタつかせる姿を涼に見せたのは恥ずかしく思い、眼鏡をクイッと上げると涼のいる台所へ行った。
「ってか、いつになったら眼鏡外してくれんの?」
「あ、…」
確かに、涼の前では無駄なものだ。
それに、何度か涼の前では眼鏡無しで話をしているのであっても無くても関係ない。
「いや、俺の前じゃなくて…」
眼鏡を取り外し、朝食を食べていた机に置こうとすると涼が少しだけ言いにくそうに僕を止める。
「…つっきー達の前、流石にずっとこのままも変だろ?」
(眼鏡を外す…)
皆の前で?
少しだけ、肩が震えた。
考えても見なかった事だが、僕の過去を知ってる今、視力が悪い訳でもないのに眼鏡というのには違和感はある。
それに…
「冬麻自身、昔と向き合っていくんだったら、そこも視野に入れないと…」
僕を気遣ってくれてるんだろう。
出来るだけ柔らかく優しく喋る涼は、眼鏡を外した僕の目をあまり見ないようにしてくれている。
「そうだよね…ちゃんと、考えなきゃ」
涼の言ってる通りだ。
自分の過去から逃げてばかりだと、何も成長しない。
少しずつ改善されつつある過去の恐怖から逃れるには、この壁を乗り越えないと…
一生纏わりついてくる。
「冬麻、冬麻が怖いなら…別にこのままでも」
「ううん。…まだ少し怖いし、直ぐには無理だと思うけど…」
それでも、いつかは
「ちゃんとありのままで、…河木くん達の前に立ちたい。」
それが、初めから偽りなく傍にいてくれた3人への…涼への恩返しだと思うから。
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