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(夏喜side)
初めて知った、羽野の俺に対する気持ち。
羽野が俺の事を“好き”だと思ってくれているのは、告白で知れたし、友達になってからは、羽野の気持ちを汲み取ろうと必死になって考えていたこともあったけど…
(そんな前から…)
入学式、羽野と仲良く前から、羽野は俺の事を、好きでいてくれたんだ。
(やばい、嬉しい…)
バクバクと煩く鳴る心臓に、顔が赤くなっていくのを感じて、思わず口元に手を当てる。
「羽野はさ…狡いよね」
羽野は真っ直ぐで、正直で、純粋な気持ちで、思ったありのままの言葉を俺にくれる。
“好き”という言葉をくれる人は、過去にも何人かいた。
もちろん、気持ちは嬉しいし、気になる人とはそのまま付き合ったりもした。
けど、こんなにも大切にしたいと思った人は、いなかった。
なんとか熱くなる頬を冷まそうと、腕で顔を抑えながら、頭で必死に関係の無いことを思い浮かべる。
「……よ」
「え?」
いつもより小さな声で呟いた声は、パンク寸前の俺の頭の中には入ってこなくて、思わず聞き返してしまう。
(…あ)
腕を外し、視線を前に向けると悲しみの色を含んだ羽野の目が俺の心を締め付ける。
いや、具体的には目は見えない。
少しだけ震えてる羽野の髪やキュッと噤まれた口、そして羽野が不安な時に見せる、下に向けられた視線。
その瞬間、熱くなっていた顔は冷め、グルグルと考えていた頭はキレイになくなっていて。
ガタンッ
羽野の腕を自分の方へと引っ張っていた。
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