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「あ、ご…ごめ」
慌てた声で腰に巻かれた腕を外そうとする羽野の腕を、ギュッと掴む。
「か、河木く…「なんで追いかけんの?」
掴んだ腕を優しく持って、俺から体を離させる。そして、そのまま俺は体を羽野に向けた。
(…困ってる)
質問にびっくりしたのか、言葉が出てこないのか、少し挙動不審な動きを見せる羽野。
「…に、逃げる…か、ら」
ようやく出した答えに、少し笑いそうになりながらも微笑みで返し、
また抱きしめたくなる気持ちを抑えるよう、少しだけ羽野と距離をとった。
(……?)
その瞬間、悲しげな表情を浮かべる羽野。
そして、恐る恐る腕を伸ばし、距離をとった俺の袖をギュッと握った。
「なんで……逃げるの…」
さっきのお返しとばかりに、質問を投げかける羽野。
なんで…って…
そんなの…
「狡いよ…河木くん」
「…え?」
「やっぱり、河木くんは…狡い」
言いにくそうに、下を俯く羽野。
この仕草を見せる羽野の事を俺はよく知ってる。
これは、羽野が俺に本音を伝えようとしている時。
前のめりになる体を抑えて、静かに俺は耳を傾けた。
「河木くんは…いつも、僕から逃げる」
「いつも、僕の心を締め付けるのに…その意図は教えてくれない…」
掴んだままの袖を強く握る羽野。
力が入りすぎているのか、拳がプルプルと小さく震えている。
「河木くんの気持ちを知りたいだけなのに、河木くんの傍にいるはずなのに、何故か河木くんはいつも遠くにいるんだ。」
胸がギュッと苦しくなる。
「…心が寂しい」
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