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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「な、なんで電話繋がらないの……」
お粥を作ってくると言った河木くんが、部屋からいなくなった瞬間に、涼へと電話をかける。
しかし、流れてくるのは留守番サービスの音声のみで涼が出てくれることはない。
「ど、どうしたら…」
保つわけが無い。河木くんが普段過ごしてる部屋で、河木くんのいる空間で、急に河木くんから看病を受けるなんて…そんなの…
(風邪で死ぬ確率の方が、絶対に低い…)
熱なんか、冷めてくれる訳が無い。
(ううぅ…本当に出てくれないじゃん…)
何十回電話をかけても出てくれない涼は、きっとこっちの気なんか知らず、新しい作品作りに没頭してるのだろう。
中学の時から電話に出ない事なんて日常茶飯事だったけど…
今までと今じゃ訳が違う!!!
見てくれる確率の方が遥かに低いメッセージをとりあえず入れ、高くなっていく熱を抑えようと目をギュッと強く瞑った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ガチャン
全く襲ってこない眠気を呼び起こしながら格闘すること数分。
お粥が出来たのか、部屋の扉が開き、「羽野?」という河木くんの声が耳に入った。
目を開けようと、ベッドで身動ぎすると、人の影が僕にかかるのを感じる。
(あ、やばい…起きるタイミング…)
フワッ
完全に逃したと思った瞬間、頭に優しい温もりが当てられるのを感じた。
(頭…撫でられ…てる)
目を瞑ったままでも感じる甘い雰囲気と優しい手に、起き上がることも眠ることも出来ない。
(…し、心臓に…悪い)
何とかして眠ろうと、羊を数え始めると不意に撫でられていた手が止まった。
不思議に思いながらもジッと動かず羊を数え続ける。
止まった手は暫くすると、手ぐしで髪をとかすように髪を優しく撫で、唇が当てられたのを感じた。
(…っ!?)
「おやすみ」
心臓がバクバクと煩い中、最後に一つ、髪を優しく撫でると河木くんはその場を去っていった。
その後、眠れるはずもなく置き手紙と共に置かれたお粥を直ぐに食べると、ベッドの中で再び羊を数え始めた…。
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