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夕方になり、部活終了を知らせるチャイムがグラウンドに響き渡る。 「よーっし、お前ら今日は上がっていいぞ!」 本当は最後に集合があるらしいが、全員が集中していたのもあり自然解散となった。 「おつかれー」「こんなキツイ練習初めてじゃね?」「明日ぜってぇ筋肉痛だわ…」 ぞろぞろと練習を終え、部室へと戻り家へ帰っていく部員達に「お疲れ様です」と声をかけるが、やはり返信はない。 (そりゃそうか…) 気を切り替え、部員達の汚れたビブスを洗濯機の中に突っ込み、洗い始める。 「おつかれ!とっきー!!」 後ろからトンっと背中を叩かれ振り返ると、泥だらけの姿で立つひろさんの姿。 「ひ、ひろさん…!泥が…」 「ん?別にこんなのへっちゃらだよ?寧ろ久々のキツいメニューのおかげで最っ高に楽しかったし!!」 急いでタオルを渡し、泥を拭いてもらうよう諭したが「そういうのは、彼氏にやってね♡」と断られてしまった。 キーパーであるひろさんには、河木くん並にキツいメニューを用意したつもりである。 東雲高校唯一のキーパーであるし、技術力も高いひろさんには、通常の練習では勿体ないと思ったからだ。 「…やっぱり、もう少しメニュー簡単にした方がいい…かな?」 「え!?なんで!!」 「…部員の人達かなり疲れてたみたいだし…もうちょっと段階を踏んでから…「とっきー」 もし、メニューが辛くて辞めるなんて事があったらどうしようかと不安になっていると、ひろさんが僕の頭をクシャッと撫でた。 「このメニューは、とっきーが俺達のことを思って考えてくれた、優しさのメニューなんだよ。確かに辛いかもしれないし、かなりキツい内容ではあると思うけど、…それが理由でメニューを変えるなんてしたら、今の東雲高校サッカー部は変わらない。」 真剣な顔をして話すひろさんは、頭から手を離すとニコッと太陽のように笑った 「汗水垂らしてサッカーと真剣に向き合ってる部員達を見て思ったんだ、あぁこれが俺の求めてたサッカーだって!…本当に皆いい顔してボールを蹴ってたから」 「いい…顔?」 「うん!いい顔!…あ、マネージャーの仕事忙しくてちゃんと見れてない?」 そう言えば、初めてするマネージャーの仕事でドタバタしてた分、練習風景は真剣に見れてなかったかも… 「じゃあ、今からグラウンド見て来よ!」

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