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ひろさんに押され、部室から離れると、グラウンドの見えるフェンスの位置にまで連れてこられた。 「ほら、あそこ!」 言われるがままに、ひろさんが指す方向を見ると、ひろさん以上に泥だらけでボールを蹴る河木くんの姿。 「練習の途中何度か諦めそうな雰囲気が流れたんだけど、無我夢中に練習するつっきー見て、部員達も集中してボールと向き合ってたんだよ」 フェンスに凭れるひろさんは河木くんを見て「かっこいいよねぇ」と呟く。 それに、僕は首を縦に振った。 (本当にかっこいい…) 「…いい顔…してるでしょ?」 (……とっても) もしかすると、僕が見てきた中で河木くんが一番‘いい顔’をしている瞬間かもしれない。 「ね、だからさ…‘いい顔’してる部員の為に、メニューをわざわざ妥協しようとしないで…?」 河木くんに向けていた視線をひろさんへと移し替える。 そして、静かに首を縦に振った。 「…あ、やべ…!」 暫く、練習を続ける河木くんを二人で静かに眺めていたが、突然何かを思い出したかのように慌て出すひろさん。 「ど、どうしたんですか?」 何か大事な事でも思い出したのか、問いかけると 「ごっめん!とっきー!れんれんと帰る約束してたの忘れてた……」 その言葉に急いで校舎の時計を見ると、部活終了からもうすぐ1時間。 つまり、風隼さんを一時間待たせていることになる。 「マネージャーの仕事まだ残ってたよね!?邪魔しちゃってホントごめん!じ、時間ヤバいから…じゃあね!!」 バックステップを踏みながら、謝罪の言葉を述べたひろさんに手を振ると、一瞬目を見開けて、嬉しそうに手を振り返してくれた。

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