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「……なぁ、羽野」
突然、河木くんに汗を拭いてる手を掴まれ、逆の手で僕の前髪をサラッと横に流される。
「ど、どう…したの?」
下から覗き込む河木くんの目は、普段よりも辺りが暗いせいかキラリと光っていて、心臓に良くない。
どうしたのかと、心臓をドキドキさせながら河木くんの目を見つめ返すと
「ずっと、俺の事待ってくれてたの…?」
優しく耳元で問いかけられ、心臓が煩いぐらいにドクンドクンと鳴り出した。
「え、…えっと…そ、その…」
震える声を抑えながら、何て返したらいいのか頭がパニックに陥る。
正直、図々しいかもと思いつつ…一緒に帰りたくて河木くんを待っていた。
帰る方向は途中で分かれるし、今日はマネージャーの仕事が残ってたけど…河木くんの練習が終わるまで、ずっと待っておくつもりでいた……
「ねぇ、どうなの…?」
逃がさないとばかりに、髪に触れていた手がそっと頬に触れる。
(やばい…心臓…持たない…)
星の明かりしかなかったグラウンドに、夜を知らせる電灯の明かりがポツポツと灯された。
そのせいか、お陰か…今までよく見えなかった河木くんの顔がハッキリと見え、思わずそこから目線を外してしまう。
「は、早く…帰らないと…河木くん、寒さで凍えちゃう…から…」
何とかして、その場の空気を変えようと、口任せに言葉を述べた。
…のだが、
「そうだね、寒さで凍えそう」
「え?」
思わぬ答えにビックリすると、掴んでいた手を思いっきり引かれ、河木くんの胸の中へと包み込まれる。
「か、かわ…河木…く…!?」
河木くんの汗の匂いだけじゃない、爽やかな河木くん特有の匂いまで感じ取ってしまう近さに体が固まっていくのを自分でも感じ
「ふはっ、羽野…固まりすぎ(笑)」
河木くんに笑われてしまった…
「だ、…だって…」
「そんなに、緊張しなくたって良いのに…」
包み直すように、ギュッと握り返されると、緊張と恥ずかしさで一気に体が熱くなる。
「羽野暖かすぎて、ずっと抱きしめてたい」
極め付きには、甘々すぎる言葉を更に掛けられ、河木くんに完全敗北の旗を上げた。
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