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第16話

 今度はシンがぼくの身体をうつ伏せにし、ぼくの性器をじゅぷじゅぷと舐め始める。シンの舌遣いは巧みだが、彼女、若しくは彼に口淫を教えたのはシンを手酷く扱った男だろうか。  ぼく自身もシンの淫靡な声に頼まれるがままに、彼女、若しくは彼を手酷く犯したが、僕はシンに関わった男をすべて殴り殺してしまいたいとまでに執着している。シンが漂わせる色香があまりにも人を惑わせるからだろう。 「考え事をする余裕はあるのですね」  唇を離したシンが上目線で問う。そんなことはしていないと言い返そうとしたが、シンはぼくの陰嚢をむぎゅむぎゅと揉み、そそり起っていくぼくの性器に舌を這わせ、ぼくの限界まで高めていった。  信じられないだろうが、ぼくはシンに性器を愛撫された数秒後には射精していた。 「……なんてことだ」  衝撃だった。シンは巧かった。 「ねえ先生。お願いがあるの。今度は先生がうつ伏せになった」 「こうか……もしかして、ぼくも挿入される側になるのかい?」 「ふふふ、違いますよ。身体を清めてきたばかりなのに、こんなに汚れてしまって……ごめんなさいね。私、我慢ができなくて。だから少しの時間だけ、貴方の身体を清めさせて」 「いいのかい? もう朝だし、君には君のすることだってあるだろう?」 「もう戻る場所はないの」  濡らした手ぬぐいをぎゅっと絞りながら、シンは悲しげに目を伏せた。 「なあ、よかったらここでしばらく暮らさないか?」 「憧れの作家様と? 無理ですよ。私は一読者で、先生は読者にとっての聖域なのです。迂闊に近づいてはならない関係なのです」 「そういうものなのか……」 「そういうものです。さあ、うつ伏せになって。背中から拭いていきますよ」  背後にシンの身体が乗る。やはり軽い。シンは手ぬぐいでぼくの身体を順番に清めていく。あまりにも優しい手つきに、少しずつ眠たくなってくる。心が満たされていくのがわかる。  やはりあの雨の中の出逢いは偶然じゃなかった。ぼくは密かにシンにこれからも一緒にいたいと告白する手はずを頭の中で考えた。

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