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第5話
「明石、お前の書いた文、イイ感じだぞ」
担任の教師にそう声を掛けられ、努は心の中で万歳をした。
「クラスの代表として、他の数点と一緒に学年選考に出すからな!」
嬉しそうな、担任の声は弾んでいる。
彼は彼なりに、この大人しい生徒のことを気にしていた。
何か、他の生徒に認められるようなきっかけを探していた。
努にとっては、大きなお世話なのだが。
しかし、学年代表への道が、一歩近づいた。
努は、珍しく笑顔になった。
努の書いた作文のタイトルは『雑草』。
フラワーショップに並ぶ、バラやユリ、チューリップなどの華やかな植物。
それとは違う、雑草のような逞しさを持つ人間に僕は成りたい、と綴ったものだった。
目立たなくてもいい。
人のためになれる、人。
そんな人間に、僕は成りたい、と。
優等生的な考えの文章は教師ウケが良く、学年選考をも勝ち残った。
努は、弁論大会の出場者になったのだ!
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