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第6話

「お前が学年代表だとぉ? ま、弁論大会なんかつまんねぇから、寝ててやるよ」  そんな風に、伸也は笑った。 (今のうちに、笑っていなよ。そのうち、笑顔が凍り付くから)  努は相変わらず伸也に返事はしなかったが、心の中でそんなことを考えていた。  そして、弁論大会当日。  全校生徒の前で発表の、晴れ舞台だ。  1年生から順に、名文が述べられていく。  中にはすっかり暗記して、原稿用紙を見ずに情感たっぷりに発表する生徒もいた。  そしてついに、努の番がやってきた。 「5番、明石 努くん。『雑草』」  アナウンスの後、スポットライトの明るい壇上へ努は登った。  拍手が収まるのを待って、努は原稿を広げた。  しかし、それは教師用に書いたものではなかった。  全く違う、別の原稿を努は用意していたのだ。

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