8 / 23
第8話
どよめきと拍手が、生徒たちの間から沸き上がった。
当の伸也は、目を白黒させている。
「梶くんは、何かと理由を付けては僕に話しかけてきます。購買でヤキソバパンを買って来い、と言うこともあります。でもそれは、好きな人ほど苛めたい、という愛情の裏返しなんです!」
これ以上はいかん、と教師はマイクの電源を切った。
途端に小さくなった努の声に、教師へのブーイングが起きる。
それでも努は、肉声で叫び続けた。
「鞄を持たされて、家まで送らされます。でもそれは『上がって行けよ』と言うチャンスを狙っているんです!」
「明石、もういい。やめなさい!」
「梶くん、僕は全部解ってるんだからね! 君が僕を好きなんだってこと!」
そこまでで、努は教師に腕を引かれて壇上から下ろされた。
しかし、盛大な拍手はしばらく鳴りやまなかった。
伸也は、いつのまにかその場から逃げていた。
ともだちにシェアしよう!