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第9話

 先生には叱られたが、努は清々しい気持ちだった。  弁論大会が終わり、教室に戻っても伸也の姿はなかった。  全校生徒の前で、大恥をかかされたのだ。  ほとぼりが冷めるまで、学校をサボる気でいるのかもしれない。  帰り道も、隣に伸也はいない。 (ああ、久しぶりに心が軽い!)  そして僕は、元のように誰からも相手にされない陰キャに戻れるのだ。  だが、話はそう巧くはいかなかった。  行き先の角から、人影が現れた。 「梶くん!」  それは、私服に着替えた伸也だった。 「よう」 「……」  まさか、こんなに早く僕の前に現れるとは!  一応、彼はワルだ。 (もしかして、殴られたりするのかな)  どきどきと、心臓の鼓動が速まってゆく。  次の伸也の言葉で、止まりそうになったが。

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