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第11話
「俺ん家、上がってく?」
伸也の家の前で、努は初めて誘われた。
「いいよ。ご家族に悪いし、これから夕食時だろ?」
全然、と笑う伸也の口元は、少しシニカルだ。
「親父いねえし、お袋夜勤だし。飯はカップ麺だし」
梶くん、寂しいのかな。
だからその反動でワルになったり、僕に絡んできたりしたのかな。
努は何だか不憫に思い、結局お邪魔することにした。
二階が、伸也の部屋だ。
雑然とした空間を想像していた努だったが、いい方向に裏切られた。
部屋は小綺麗に片付けられており、観葉植物まで飾ってある。
「おふくろが時々、勝手に片付けやがってよぅ」
それでも、今この時に維持してあるのは伸也の持つ几帳面さの表れだろう。
「いいじゃない。落ち着くよ」
「そうか?」
照れたのか、伸也はパーカーを脱いだ。
脱ぎながら、こんなことを言ってきた。
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