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第6話

 オメガ専用養護施設には、国からの補助金が与えられていたが、それでも経営はどこも苦しかった。  夕侑のいた施設の所長も、オメガの子供に抑制剤を与えて発情を管理していたが、薬は海外から輸入した安い粗悪品ばかりだった。  効きが弱ければ量だけ増やす。そのせいで発情バランスを崩した子も多い。夕侑もそのひとりだった。 「けれど、対策は考えないとな」  体温と血圧を測りながら神永がうなる。夕侑もままならない自分の身体にため息をついた。  このままでは奨学生としての役割をこなせなくなる。授業料と寮費の免除、加えて大学進学時の補助まで約束された今の環境を、こんなことで失いたくはなかった。今まで人一倍勉学にはげみ、高校受験で奨学生枠を勝ち取ってこの学園に入学したのだ。夕侑は高等部一年の中でも、五本の指に入るほど成績は優秀だ。それは将来、世界中のオメガのために役に立つ仕事をしたいと考えているからだった。 「失礼します」  神永が処方を思案していたら、ドアがノックされて制服姿の生徒がふたり保健室に入ってきた。 「先生、匂いが寮内にもれていますよ。夜間訓練でもするつもりですか」  尊大な物言いでやってきたのは、高等部三年の生徒会長で、寮長でもある御木本獅旺( みきもと しおう)だった。  百九十センチある身長に、バランスよく筋肉のついた身体。端整な顔の作りは、男らしく野性味もある。それは彼が獅子族の獣人だからだ。  先刻、檻の上にのぼって他の獣人生徒らを蹴散らしていたのは彼だった。 「また抑制剤が効いていないのか」  獅旺が夕侑を見おろしながらきいてくる。  彼はこの学園で一番優秀な生徒であり、しかも大企業を多く抱える御木本コンツェルンの御曹司だった。

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