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第8話

「はい。大谷君の発情をおさめるのが薬では無理だとしたら、自然の摂理にしたがって欲望を放出してあげればいいんじゃないですか」  銀髪で怜悧な顔立ちの白原は、涼しげな声で説明した。 「オメガが発情するのは、アルファを誘うためなんです。ですからアルファがそれに応えてやれば、オメガは満足するでしょう?」  夕侑はどういうことかと、白原を見あげた。 「僕と獅旺で、彼のたまった性欲を抜いてあげますよ」 「――え」  唖然とした夕侑の前で、神永が顔をしかめる。 「オメガ奨学生に手を出すのは、校則違反だよ」 「先生さえ、黙っててくだされば大丈夫です。それに先生だって、発情管理もできない無能な学校医としてクビにされたくはないでしょう」  白原がきれいな顔に笑みを浮かべる。  夕侑はふたりに視線をさまよわせながら大きく首を振った。 「……な、何を……。い、嫌です。そんなこと、絶対に」  戸惑う夕侑に、獅旺が冷淡に言う。 「お前は俺たちアルファの訓練用の餌だろ? 餌としての役目をきちんとこなすことができなければ、この学園を去るしかなくなるぞ」  その言葉に、夕侑は震えあがった。  ここを去る。そんなことになったら、将来のために勉強することもできなくなる。発情をコントロールできないオメガなど、社会でまともに生きていくすべもない。  しかし、このふたりに欲望の処理を世話されるなど、耐えられない羞恥だ。  性欲の強い獣人らは、性に関するモラルが低い。性欲処理は、彼らにとっては空腹を満たしたり運動したりするのと同じほどの感覚だ。  獅旺と白原にとっても、夕侑とセックスするのはその程度のものなのだろう。

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