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第21話
「何で、こんな所に……」
サニーマンは『オリオン戦士サニーマン』という題名で放送されていた番組の主人公で、当時子供たちに爆発的な人気を博していたキャラクターだ。
大型バイクを乗りこなし、街の悪から人々を守る正義の味方である彼は、助手のスマイルボーイと共に毎週さまざまな事件にいどみ問題を解決していた。
もとは古い漫画が原作で、最近またリメイクされてテレビで放送され、子供たちの間で人気になっていることも知っている。
夕侑も昔、これと同じストラップを持っていた。お菓子のおまけだったストラップ。欲しくて欲しくて、施設の職員に頼みこんで買ってもらった憶えがある。
手の中のストラップは所々塗装がはげている。けれど汚れてはいない。きっと、これを落とした人にとっても大切な思い出の品なのだろう。
寮の落としもの担当は、たしか副寮長の白原だったはずだ。彼の所に持っていこうとしたら、廊下の先から誰かがやってきた。
「……あ」
それは獅旺だった。背が高く、逞しい体つきは離れていてもよくわかる。
夕侑は反射的に、廊下の角を折れてかくれてしまった。昨日の今日で、彼にどんな挨拶をしていいのかわからなかったからだ。
獅旺が通りすぎるのを、曲がり角の陰でこっそり待とうと考えて身をひそめる。
しかし、彼はいつまでたってもこちらにやってこなかった。不思議に思って、そっと角の向こうをうかがってみる。
少し離れたところにいる獅旺は、廊下をまるで何かを探すように、下を向きながらいったりきたりしていた。
「……」
まさか。――これを探している?
夕侑は人形を握りしめた。
いや、そんなはずないだろう。彼ほどの金持ちが、こんな薄汚れたストラップを持つはずがない。しかもこれは、彼が持つにしては子供っぽすぎるオモチャだ。
けれど、もしかして、これが彼の探しているものだとしたら。
夕侑は角を曲がって、おずおずと獅旺に近づいていった。
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