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第25話 朝食
次の日の朝は、起床後にとなりの神永の部屋で簡単な健康診断をしてもらった後、彼と共に食堂へ向かった。
朝日さす食堂では、何十人もの寮生が雑談をしながら朝食をとっている。夕侑と神永は、入り口の横に積まれたトレーを手にして、ビュッフェスタイルのカウンターから思い思いの皿を手に取った。
裕福な子息が多いこの学園の寮は、料理も恵まれていて、和洋中の料理が朝から盛りだくさんならんでいる。
夕侑は昨日、獅旺にちゃんと食べろと言われたことを思い出し、いつもよりひとつ多めに小鉢をトレーにのせた。
それを持って窓際の席に移動し、神永と向かい合って椅子に腰かける。こちらをチラチラとうかがう生徒らを無視して、早めに食事をすまそうと料理を口に運んだ。
夕侑は学園中、どこへいっても注目の的だ。二ヶ月に一度、濃厚なフェロモンをまき散らすヒト族オメガ。どうやったら密かに襲うことができるのだろうかと、性欲旺盛な年頃の獣人生徒らが考えているのがよくわかる。
――お前だって、俺たちが欲しいんだろう。犯し殺して欲しいんだろう。わかってるぞ――。彼らの目はそう語っている。
胸苦しさを覚えつつ、食べ物を喉に流しこんでいると、頭の上からさわやかな声が聞こえてきた。
「おはようございます、先生」
顔をあげると、白原と獅旺がいた。
「やあ、おはよう」
「ご一緒してもよろしいですか」
ニコッと笑う白原は、いかにも優しげな優等生といった風貌だ。
「ああ、いいよ」
「ありがとうございます」
許可を得た白原が夕侑の隣に、獅旺が神永の横に座る。
白原がとりとめのない話題を振ってくるので、三人で応えながら、一見和やかに食事をした。
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