27 / 112

第27話

「僕も、同じものを持ってたんでわかります。当時、すごく人気だったキャラのオモチャなんです」 「へえ。でも、傷もついてるし、汚れているし。本人が価値をわかってるのなら、ネットのオークションででも新しいものを手に入れるでしょう」 「同じものを持っていた?」  そこで獅旺が顔をあげてきた。 「……はい。けど、僕のは、もう、ないんですけど」 「なくしたのか?」  重ねて問われて、ちょっとビックリする。獅旺がなぜ興味を持ったのかが不思議だったからだ。  夕侑は小学校のときの出来事を皆に話した。いじめられ、宝物だったストラップを捨てられたことを。すると白原が顔をしかめた。 「何て奴らだ。今からでも僕がいって、喉元をかみ砕いてやろうか」  物騒な台詞に、慌てて首を振る。獣人は平気な顔でそんなことを言うから返答に困ってしまう。  それに白原は、ふっと微笑んだ。 「じゃあ、それは君が持っていればいいよ。落としもの掲示板には一応、のせておくけど。持ち主が現れなかったら、そのまま君がもらっておけばいい」 「え、でも」 「持ち主不明の落としものの処分には、いつも困ってるんだ」  さらりと言って、白原は夕侑にストラップを返してきた。 「……はい。じゃあ、そうさせていただきます」  サニーマンが自分の手に戻ってきたことに、ほのかな嬉しさを感じつつ夕侑はそれを握りしめた。  ふと、獅旺に目を向けると、彼は早々に食事を終えて夕侑の手元をじっと眺めている。  端整な顔は何か考えにふけっているようで、いつもの近よりがたい雰囲気は少し和らいでいた。

ともだちにシェアしよう!