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第27話
「僕も、同じものを持ってたんでわかります。当時、すごく人気だったキャラのオモチャなんです」
「へえ。でも、傷もついてるし、汚れているし。本人が価値をわかってるのなら、ネットのオークションででも新しいものを手に入れるでしょう」
「同じものを持っていた?」
そこで獅旺が顔をあげてきた。
「……はい。けど、僕のは、もう、ないんですけど」
「なくしたのか?」
重ねて問われて、ちょっとビックリする。獅旺がなぜ興味を持ったのかが不思議だったからだ。
夕侑は小学校のときの出来事を皆に話した。いじめられ、宝物だったストラップを捨てられたことを。すると白原が顔をしかめた。
「何て奴らだ。今からでも僕がいって、喉元をかみ砕いてやろうか」
物騒な台詞に、慌てて首を振る。獣人は平気な顔でそんなことを言うから返答に困ってしまう。
それに白原は、ふっと微笑んだ。
「じゃあ、それは君が持っていればいいよ。落としもの掲示板には一応、のせておくけど。持ち主が現れなかったら、そのまま君がもらっておけばいい」
「え、でも」
「持ち主不明の落としものの処分には、いつも困ってるんだ」
さらりと言って、白原は夕侑にストラップを返してきた。
「……はい。じゃあ、そうさせていただきます」
サニーマンが自分の手に戻ってきたことに、ほのかな嬉しさを感じつつ夕侑はそれを握りしめた。
ふと、獅旺に目を向けると、彼は早々に食事を終えて夕侑の手元をじっと眺めている。
端整な顔は何か考えにふけっているようで、いつもの近よりがたい雰囲気は少し和らいでいた。
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