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第31話
「こんなにたくさんもらっていいんですか」
「もう使わないからね。もしもわからない所があったら、いつでも教えてあげるよ」
「本当ですか」
山積みの本は、夕侑にとってはありがたいものばかりだ。嬉しくて順々に手に取っていたら、不意にあいた窓から誰かが飛びこんできた。
「――っ」
驚いて本を床に落とす。大きな獣の影に、恐怖を感じてとっさにドアまで走って逃げた。
「おい、獅旺っ」
部屋の真ん中に四本足ですっくと立ったのは、尾の長さを含めて全長が二メートルを超えるであろう、立派な体躯の獅子だった。
「いきなり入ってくるなよ。大谷君がビックリしているだろう」
白原が獅子を怒る。すると大柄な獣は、口角を持ちあげ低く唸った。
かるくジャンプして身をひるがえすと、あっという間にヒトに変身する。素裸の獅旺が目の前に現れて、夕侑は慌てて目をそらせた。
「何だ。いるとは思わなかったんだ」
悪びれない言い方でふたりに背を向けると、壁のクローゼットまで歩いていく。
「その恰好で、いったいどこに?」
白原が呆れ声でたずねた。
「森を駆けてきた。毎日走らないと、身体がなまるからな」
クローゼットの中から服を取り出しながら獅旺が答える。いけないと思いつつ、その姿をそっと盗み見した。
見るからに屈強そうな逞しい身体。背中から腰のラインは硬くストイックな魅力に満ちている。夕侑は胸の昂りを覚えて、やましさに目を伏せた。
「驚かせてすまなかったな、大谷」
「……いえ」
獅旺はボクサーパンツをはき、Tシャツに腕を通しながらきいてきた。
「で、そっちは何をしてるんだ」
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