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第38話

 轟はふたつ年上の犬族ベータで、死んだ友人と夕侑の中学の先輩だった。彼とは、友人を亡くした後もつきあいが続いている。 『実は、今度の日曜に、大谷君の学園の近くの富士遊園地で、僕の所属する劇団の仲間と一緒にサニーマンのショーをするんだ。よかったら見にこないかなと思って。招待券も贈るよ』  突然の誘いに、夕侑は嬉しくなって急いで返事を打ちこんだ。 『本当ですか! 会えるのは久しぶりですね。ぜひ、いかせてください!』  轟は現在、高校を中退して、役者を目指して修行をしている。遊園地のヒーローショーも、アルバイトで引き受けたものなのだろう。夕侑も中学時代に数回、彼のショーを観にいったことがあった。 『じゃあ、詳細は後日、またしらせるよ。楽しみにしてるからね』  と、犬のスタンプと共に返事がくる。夕侑もそれに『ありがとうございます』とお礼のスタンプを返した。  その夜、隣の部屋にやってきた神永に、週末の外出を相談する。けれど神永は「うーん」と唸って、首を縦に振ってくれなかった。 「君をひとりでいかせるのは不安だなあ。発情期と重なっていないとはいえ、ここのところ君の発情サイクルはとても不安定になっているし、抑制剤も効きにくいときてる。誰かが一緒につきそえればいいのだけれど、僕も週末は学会だ」 「……そうですか」  仲のいい友人も家族もいない夕侑は、気安くつきそいを頼める相手もいない。  白原のことが頭に浮かんだが、万が一、発情したら彼に迷惑をかけると考えると、安易にお願いする気にはなれなかった。  意気消沈して、自室に戻る。外出さえままならない不自由な身体が恨めしくて、その日は勉強もできずに、落ちこんだまま眠りについた。

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