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第48話
彼とはもうキスもしていたし、それ以上のこともしているから気にする必要などないはずなのに、心臓がせわしなく跳ねるのをおさえることができない。
夕侑は俯いて、獅旺の紅茶味に口をつけた。
「僕はこちらのほうが美味しいです」
どちらも美味しいが、紅茶のほうが香りがいい。
「そうか。ならお前は、そっちを飲んどけ」
獅旺は夕侑の飲んでいたストローに犬歯を立てながら言った。
まるでデート中の恋人のような気さくなやり取りに胸が弾む。こんな時間をこの人とすごすことになるなんて、予想もしていなかった。
獅旺の表情も、いつもより穏やかだ。少し癖のある栗色の髪に、彫りの深い顔立ち。それが今日は一段と甘い魅力を増している。
しばらく休憩した後、また彼が興味を示したアトラクションに片端から参加していくことにした。
お化け屋敷に、丸太の川下り。彼は動物模様のついたゴーカートでさえ嬉しげに運転した。
いつもは悠々としている人だというのに、それを忘れてしまったかのようにひとつひとつの乗り物を楽しんでいる。明るい笑い声をたてる獅旺に、夕侑もつられて自然と微笑んでいた。
「そろそろショーの時間だろう。けれど、乗っていないアトラクションがまだある」
「そうですね」
「だから、またこよう」
「えっ」
獅旺がごく自然に誘ってくる。
「わかりました」
普通の高校生カップルが休日に遊びにきたような気軽な雰囲気に、嬉しくなってそう答えた。
時計を確認しながら、遊園地の真ん中にあるショースペースへと向かう。夕侑が先導して、ショーが開催される場所まで彼を連れていった。
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