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第69話 スキャンダル
「大谷君」
その日の夜、夕食を食堂ですませた後、部屋に戻ろうと廊下を歩いていたら、離れた場所から白原に声をかけられた。
「この前は大変だったね。大丈夫かい? 何か困ったことがあったら相談に乗るよ」
心配そうな顔で近づいてくる。
「あ、すみません。ありがとうございます」
夕侑は礼を言って頭をさげた。白原は横にくると、廊下に群れる寮生から夕侑を遠ざけるようにしてすみへと導いた。周囲を気にしながら、顔をよせてそっとささやく。
「ネットのほうはすぐに落ち着くと思う。騒ぎになるのは少しの間だけだろうし。君は身元特定もされていないから、心配する必要はないよ。獅旺のほうはちょっと大変なことになってるけど」
「え?」
何の話かと、相手を見返す。
「ネットで騒ぎ?」
嫌な予感に、顔がこわばった。
「あれ、もしかして知らないの」
「何のことですか」
白原は困った顔をした。
「じゃあ、ちょっと部屋においで。今は獅旺もいないから」
そう言って夕侑の肩に手を回す。夕侑は白原と一緒に、二階の寮長室へと向かった。
「そうか。君は友人がいないから、噂が耳に入っていなかったんだな。学園中、知らない奴はいないんだよ」
部屋に入ると、夕侑をベッドに腰かけさせてその横に自分も座る。ポケットからスマホを取り出して操作すると、夕侑に手渡してきた。
「……これは」
そこには数枚の写真が表示されていた。どれもラブホテルで撮られたものだ。
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