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第73話 隠していた過去

 翌日の放課後、夕侑も理事長室に呼び出された。  理事長や校長、他の教師らの前で事件について叱責されるも、最後は以後気をつけるようにと言われるにとどまる。停学も、奨学生制度の廃止についても説明はなかった。  夕刻、保健室で定期検診を受けながら、そのことを神永にたずねてみると、学校医は「うーん」と唸って事情を話してくれた。 「今のところ、制度については棚あげ状態かな。今後の様子を見て決めていくらしい」  神永が測定した数値を読み取りつつ言う。  ネットでの騒ぎは、あの後、投稿されていた写真はすべて削除され、代わりに御木本家の弁護士のコメントが公開されていた。 『御木本家の子息は、発情した知人のオメガを治療するためにシティホテルにかくまった。知人オメガは抑制剤の効かない体質だったことと、渋滞で救急車を呼べなかったことがあり、あのような緊急措置を取らざるを得なかった』  という文面に、炎上は鎮火していった。きっと御木本家が素早く対処したのだろう。  とりあえず、世間的には事件は収束したようだった。獅旺が夕侑を助けるために、色々な場所で必死に動いていたのだろうと思うと胸が痛む。 彼には迷惑ばかりかけてしまっている。この身体のせいで。獅旺の将来のためにも、これ以上、彼に関わるのはよしたほうがいい。それに、自分自身の未来のためにも。 「明日ぐらいに、発情がきそうだ。訓練の準備をするように担当教諭に連絡しておくよ」 夕侑は瞳を伏せて、神永の話にうなずいた。 「今日はゆっくり休んで。それから、訓練後の相手は白原君だけがいいんだよね」 「はい」 「そうなると御木本君が荒れそうだな。彼はいつもは余裕綽々としているくせに、君のことになると、まったく余裕がなくなるから」  神永が苦笑する。

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