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第74話

「まあとにかく、早めに休息を」 「わかりました」  礼を言って、自分の部屋に帰ろうと横においていた鞄を手に取る。  すると廊下から荒々しい足音が響いてきた。かと思ったら、ガラリと乱暴に扉がひらかれる。 「神永先生」  怒りの形相で保健室に入ってきたのは獅旺だった。 「やあ、早速きたな」  神永が座っていた椅子を回転させて、獅旺を迎える。  「訓練の後に、大谷の相手をするのが、どうして白原だけになったんですか」  獅旺がずかずかとふたりのもとへきて言った。 「君は謹慎中だろう。あんな騒ぎを起こしたんだ。だから、これからは白原君だけにしなさいと、上から言われたんだ」 「納得できません。夕侑は俺が相手をする。最初からそう決めていたんだ」 「決めるのは君じゃないよ」  神永が獅旺をたしなめる。 「いえ。決めるのは、俺です」  獅旺は苛立った様子で言い切った。そして椅子に座っていた夕侑を見おろす。 「お前だってわかってるはずだ。白原になんて、抱かれたいと思っていないことに」  獅旺の瞳は、怒りと支配欲に満ちている。断言されて背筋が震えた。 「これは、大谷君からの要望でもあるんだよ」  神永が冷静に伝える。すると、獅旺が眉をよせた。 「何で?」  ありえない、と言うように夕侑を見る。その目つきの鋭さにひるみそうになりながらも、ハッキリと伝えた。 「そうです。僕も、先生にお願いしました。……やっぱり、獅子族の人は、怖いから……。し、白原さんは、優しいし。だから、あの人だけなら」  話の途中でいきなり獅旺に腕を掴まれる。

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