81 / 112

第81話 *

「くそっ。本当に忌々しいな。この貞操帯は。どうにかして、壊してやりたい」  抑制剤を飲んでいるはずなのに、白原は段々と余裕がなくなってきていた。 「や、あ、――ん……ッ」  貞操帯を無理矢理引っぱったり、爪を立てたりする。そのたびに振動が愉悦を生む。 「甘い声を出して。そうやって僕を誘うのか。本当に、オメガは淫乱だな。ああ、くそっ、挿れたいなああっ」  手つきがどんどん粗暴になってくる。そうしてユキヒョウの影が揺らめく。バーストしそうになっているのかもしれない。 「し、しら、はら……さあ、ん、やぁ」  相手をとめようとしても、自分も欲情の嵐にのまれている。 「いいのか? ああ? いいのか」  リングを強く扱き、自分の肉竿を後孔に押しつけながら腰を振る。ガクガクと揺さぶられながら、夕侑は快楽に弱い自分を心の底から呪った。 「い、ぃ、あ、や、やァ……や、も、もぅ……」 「嫌なのか? そんなわけないよな。こんなに濡らしてよがってさ」  白原はいきなり夕侑の身体をひっくり返した。うつ伏せにすると、細い腰をグイッと自分のほうに引きよせる。夕侑の両足をとじて、間に陰茎をさしこんで扱いた。 「や、あ、ふ、っ」 「これしかできない。でもこんなんじゃ、全然足りないよ」  激しく抽挿しながら、白原は手をのばして夕侑の乳首をきつくひねった。 「ああ、やだ、やだぁ、痛い。……いい、痛い、イイっ」 「どっちなんだい」  白原が笑う。夕侑は目をとじて、つらい現実を忘れようとした。  すると、脳裏に獅旺の姿が浮かびあがってくる。  一緒に遊園地に出かけて、恋人同士のようにすごしたことや、笑いあったこと。夕焼けのベンチで互いのことを話して聞かせたこと。そして発情を起こして、ふたりホテルに駆けこんで激しく抱きあったこと。そんなことが鮮明に思い出されて、苦しくて胸が押しつぶされる。  あのときの自分は、心も身体も全部が彼に向かってひらいていたのに。

ともだちにシェアしよう!