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第83話 獅子の勇姿
目覚めたのは、冷たいコンクリートの床の上だった。
自分は全裸のままで、あお向けで寝かされていた。薄暗いこの場所は、どこかの倉庫のようだ。高い天井に、細い鉄骨がはりめぐらされている。建物は古くほこりっぽい。
広い倉庫のすみの、工具の並んだ棚の前に、夕侑は右手と右足、左手と左足をそれぞれガムテープで巻かれた状態でおかれていた。
「目が覚めたかい」
股の間から声がする。そちらを見ると、ニヤリと笑う白原がいた。
手には、コードで機械に接続されたカッターを持っている。
「……ぇ」
「動かないでくれよ。僕ももう、バーストしそうで手元が狂いぎみなんだ」
貞操帯を掴み、何か作業をしている白原が手をとめずに言ってくる。
「……な、な、何を」
「この貞操帯、以前からどうしても外したいと思っててね。神永が鍵を持ってるらしいんだが、それがどう頑張っても手に入らなくってさ。だから、超音波カッターで切ることにしたんだ。ああ、動かないで、皮膚まで切れちゃうから」
「や、や、……やめて、助けてっ」
「助けを呼んでもむだだよ。ここは僕の親が持ってる倉庫で、学園からも離れている。こっそりここまで僕の車で運ぶのは大変だったんだからねえ」
白原の言葉から、彼は意識を失った夕侑を、車で人気のない倉庫まで誘拐してきたということがわかった。ここで貞操帯を壊して犯すつもりらしい。
突然、耳障りな高音がしたかと思ったら痛みが下腹に走った。
「いっ、いい、痛い」
「ほらほら、動くから。ああ、やばい、フェロモンと血が混じると、すごい。クラクラする」
白原の姿が揺らいで、獣化する。
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