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第84話 *
「獣化したら切れないから、早くしなきゃだね」
「いやだ、やめて」
「超音波をさける耳栓をしてるからよく聞こえないなあ。別に僕は、君が死んだってかまわないんだ。突っこめればそれで」
白原はいつもの優しさがどこにもなかった。それともこれが本来の姿なのか。今までは、猫をかぶって夕侑をだましていたというのか。
「早く早く」
「――ああっ」
白原の手は乱暴で、夕侑の身体のことはまったく頓着せずカッターを動かした。次々にひどい痛みに襲われるが、縛られているので逃げられない。
やがて貞操帯が切断されると、白原は乱暴にそれを取り去った。
「ああ、これで、やっとつながれる」
欲に正気を失った姿が、グラリと揺らいでユキヒョウに変身する。二メートルはこえる獣がよだれをたらしながら現れて、夕侑にのしかかってきた。
「ゃッ、や……ぁ……っ」
痛みに朦朧としながらも、恐怖におののく。夕侑は仰向けで相手に向かって両足を広げるような体勢で拘束されていた。発情はまだ続いている。
――犯される。こんな獣に。嫌だ、絶対に――。
白原は獣特有の長くて凶暴なペニスを、易々と後孔に突き立てようとした。
「やめて……お願い……いや……」
絶望で首を振りながら拒否する。
そのとき、離れた場所から、金属を殴りつける大きな衝撃音が聞こえてきた。
続いて二度、三度と、激しい音が鳴り響く。
驚いて頭を起こすと、倉庫の入り口のシャッターが内側にベコリとへこんでいるのが目に入った。
耳栓をしている白原は、欲情にとらわれていて背後にまったく気づいていない。舌なめずりして夕侑とつながろうとしている。
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