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第100話

「……なんで」  掠れた声で問いかけた。 「なんで、僕なんかに」  自分などには、身の程をこえた告白だ。 「お前のことが、好きだから」  獅旺の言葉は、夕侑の胸を射抜いてきた。けれどその台詞は自分には貴すぎて、つい大きく首を振ってしまう。 「運命の番なんて、ただの欲望でつながった関係でしかないです。フェロモンで惑わされているだけだと、……あなたには、もっと相応しい人がいるかもしれないのに……」  自分は獅旺のことが好きだったしそれを伝えたいと思っていたけれど、それで彼の恋人になれるなどという期待や自惚れは全く持っていなかった。  獅旺が微笑みながら、夕侑の言葉を否定する。 「お前だけだよ」 信じられないというように、また首を振ってしまう。すると獅旺は揺るぎない自信に満ちた声でたずねてきた。 「夕侑、お前は地下のあの部屋を見てどう思った?」 「え?」 「あの、子供っぽい夢のつまったおもちゃ箱みたいな部屋を、お前は笑うか?」 「まさか」  それは即座に否定した。あの部屋がどれだけ素晴らしく、夢にあふれていたか。獅旺の心を映しだしているか。夕侑にはよくわかっていた。 「俺がヒーローになりたいと言って、微笑んで、すごいですね、と返してくれたのはお前だけだった。皆、笑うか馬鹿にするか、相手にしないかだったからな」  一歩だけ、獅旺が踏み出してくる。 「夕暮れの遊園地で、お前の笑顔を見たとき、俺は、運命の相手がお前で本当によかったって思った」

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