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第106話 *

「やっと手に入るんだな」  感慨深げに呟いて、夕侑の下腹に手をあてる。そこには白原につけられた傷痕がいくつもついていた。 「もう誰にも触れさせない」  大きな手でなでられて、肌が粟立つ。 「……ん」  傷をひとつずつ確認するように触ってから、下生えへと指を忍ばせる。夕侑の雄はもう、官能に芽吹いていた。  そこに手のひらがそえられ、根元から形をたしかめるようにゆっくりと上までたどられる。 「……は、ぁ、ふ……」  自然と甘い声がもれた。発情していないせいで、頭のどこかが冷静だ。だから自分の反応がとても恥ずかしい。 「いつもと声が違う」 「……ぇ」  夕侑は手を握りしめ、喘ぎを隠すように口元にあてた。 「恥じらっているような、甘えているような声だ」 「そ、そんな、つもりは……」  全然ないというのに。 「いいさ。そのほうが俺も安心する」  そして、勃ち始めた茎を愛おしむようにさすった。 「可愛らしいからな」 「……ぇっ」  可愛いなどという、信じられない言葉に顔が赤くなる。  獅旺は夕侑の反応にかるく笑った。フェロモンに惑わされていない彼は、余裕があって慈愛に満ちている。

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