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第107話 *

 夕侑もまた、嵐のような毒々しい発情に支配されていないこの状況が、とても不思議で新鮮だった。  こんなにおだやかなセックスがあったなんて。  獅旺が上体を倒して、夕侑の胸に唇をあててくる。小さな突起を優しく吸って、甘噛みした。 「ぁ、ん……ッ」  身をよじると、脇腹にもかるく噛みつかれる。ほんのわずかな痛みは、快感を呼ぶスパイスになる。ピリリとした刺激は、下肢をまた育てた。  獅旺が身体中にキスをしながら、指を性器の後ろにすべらせてくる。指先をつぐんだ場所にあてて、やわらかくもてあそぶ。もう濡れているそこは、番う相手を待ってうねりながら自ら綻んだ。 「欲しいか」  低く艶めいた、男の声がする。 「……ぇ」 「発情していないときは、欲しくはならないか」  夕侑は熱いため息をもらしながら、首を振った。 「欲しいです」  望んでいるのは、心のほうだ。獅旺に対する恋心が、欲しい欲しいと訴えかけてきている。 「よかった。俺もそうだよ」  獅旺は指を外すと、夕侑の両足を大きくひらいて間に腰を入れてきた。硬い雄茎が、挿されるのを待ちわびる蕾へと押しあてられる。 「――あ」  先端が挿入されると、ぬっぷりと入り口の肉が広がっていった。剛直が粘膜をこする。はやる情欲を制しながら、獅旺が身を進めてくる。何も知らない奥が、初めての刺激にずくずくと疼く。 「……ん、ぁ……」 「ああ、熱いな」

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