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第109話 *

 夕侑もまた、解放を望んでいた。後孔の奥が彼を欲しがって切なく鳴いている。オメガの本能が、番となったアルファの精を求めているのだ。 「夕侑」  名を呼びながら、獅旺が腰使いを荒くする。すると硬く長い雄茎が濡れた音をたてる。野性的で官能的な響きにさらに煽られた。 「――ああ、もう」  やがて限界がきたのか、獅旺は数回、肉角を限界まで突きこむとブルブルッと奮わせた。 「――ッ、く」  獣人の太い性器が放埒する振動に、夕侑もまた身体の奥深くから愉悦の波にさらわれて、絶頂へと導かれた。 「……ぁ、イく……っ……」  弾けるような、キラキラした甘美な感覚が、肉茎の先端からほとばしる。  夕侑は未知の衝撃に、身を震わせた。 「……あ、ァア……ぁ、んんっ――……」  逐情と同時に、下腹が熱く濡れたのがわかる。 「…………は、ぁ……っ……」  やわらかい快感が、全身を満たしていく。まるで身体が蜜になって蕩けていくようだ。こんなにも自然なオルガズムは初めての経験だった。 「夕侑」  獅旺が牙を抜いた場所を舐めてくる。夕侑は両手で、相手の頭を抱きしめた。 「――獅旺さん……」  すごく幸せで、すごく開放的な気分だった。  運命のアルファにとらわれて、これからは彼だけのために生きていくというのに、以前よりずっと解放された気持ちになる。 「愛してるよ」  耳元で、番となった男が優しくささやく。 「……僕もです」  答える声が、甘くかすれる。  夕侑は目をとじて、変わってゆくであろう幸福な未来に身をゆだねた。

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