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第5章~木漏れ日コントルダンス(前)~
「カワ(・∀・)イイ!! 」
朝からダツラの歓声が上がる。彼の前には例によって着替えさせられたトウキが居る。
半袖、半ズボンにブーツ、フード付のケープというシンプルながら清潔感のある服装は彼の選択にしては少し意外だが幼い顔立ちと身体にはよく似合っている。
それにしても毎回何処から入手しているのか、それ以前に最初からこの服があるのなら昨晩の珍事は何だったのか疑問は尽きない。
「・・・・・ 」
ダツラの視線に煽 られてかトウキがはにかんだ様に微笑む。
「もう何ていうか、イヤらしくないのが見ようによっては一番イヤらしいみたいな?ああ、このまま脱がしちゃいたい 」
「??」
何故着替えたばかりなのに脱ぐのか、訳が分からずダツラに抱きしめられたままトウキがオロオロしている。
「殴っていいぞ」
寝起きでいつも以上に不機嫌なデリスがだるそうに呟いた。
「なんだって? 」
ようやく目が覚めたらしいデリスが、上着を羽織ながらダツラの言った言葉を聞き返す。
「だから見つかったって。アトロピンリゾマの死体が・・・・森林公園奥で 」
備え付けのパソコンの前で頬杖を付いているダツラは目を細めて画面を見ている。この事態は彼にも予想外の事だった様だ。
「アトロピンリゾマか・・・・・ヤツとは違う形で会いたかったな・・・・ 」
「変態は2人もいらねー 」
想像したらしいデリスがげんなりした顔でツッコむ。
「ん?死因は刃物による失血死。凶器、犯人共に不明・・・・胸部に残った傷跡から剣等による可能性が高い。・・・・調査続行・・・・ね 」
そう言うとダツラは顔を上げデリスの方を見る。
「あ、なんだ?」
「な、ワケないか。昨夜はトウキ君と楽しいことしてたみたいだし」
「何がだっ!普通に寝てただけだろうが! 」
デリスがダツラの胸倉を掴み揺さ振る、早朝だというのに元気な2人である。
ダツラが勘繰 ったのは、昨晩ソファーで寝ていた筈のトウキが今朝はデリスが居た方のベッドで寝ていて逆にデリスがソファーで寝ていたからである。
あの後部屋に戻ったトウキはデリスのベッドで一緒に寝ていたのだが、今度は色々な意味で眠れなくなったデリスが結局ソファーに移動する羽目になったのだ。
「えー?夕べはお楽しみでしたね、じゃなかったの?」
「んなワケあるかっっっ!テメーはいっぺん頭かち割ってこい!!」
勿論何も無かったのは判っているがどうも茶化さずにはいられないらしい。
「いまどき剣なんて使ってるのデリスぐらいだし、もしかしてって思ってね。あ、もう一人いたか・・・・・・『断罪の天使』が 」
その言葉を聴いたデリスが方眉を上げてダツラを睨みつける。二人の喧嘩を止めようとしていたトウキにも緊張が走る。
「裁き、かな? 」
心にも無い言葉でダツラは更に煽 る。
彼を掴むデリスの腕が震えていたが、突き飛ばす様に離すとそのまま部屋から出て行ってしまう。
「オレは神も天使も信じちゃいねーよ。胸糞悪い話すんな 」
そう吐き捨てる様に一言だけ残した彼の言葉は、怒鳴らない分怒りの深さを表している様に思えた。
一方トウキの方は困惑していた。
デリスが終末信仰を信じないのは知っていたが今の言い方は強い憎しみが感じられた。
何故だろうか、本来神と天使は安らぎと幸福を与える存在であり憎しみの対象ではない筈なのに。何が歪んでしまったのだろうか。何が彼を苦しめているのだろうか。
聞いてみたい、昨夜の言葉も含めて。答えてくれるだろうか?
(待って!)
何かに突き動かされる様に急いで扉に手を掛ける。
ところが。
「天使さん? 」
突然かけられた言葉にトウキは身を竦(すく)める。
振り返るとダツラが胡散臭げな笑みを浮かべていた。
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