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第7章~虚構のパッサカリア(前)~

―アンドロイド―  前に一度信者から聞いた事があった。姿は人でもその身体を作っているのは金属と人口皮膚、中枢を司るのは電子回路。科学と英知の結晶、人に似て人でない機会人形。それが彼、ダツラだと言うのだろ うか。  闇夜の湖面のような黒い瞳がトウキを見つめると再び(はりつけ)にされたように動けなくなる。彼の持つ空気に絡め取られ肩に置かれた手を除ける事が出来ない。 「!」 足元から這い上がって来る震えに強く目を瞑る。  気付かれただろうか?  全てが解からないまでも先程のクジンとの会話で、トウキが何かを隠している事を読み取るくらい彼には造作も無いだろう。 だとしたらどうすれば・・・・・。今の彼に問い詰められて真実を隠し通せる自信は無い。 「平気!?どこか怪我とかしてない? 」 (え?) 思い掛けない言葉にダツラの顔を覗き込む。心配そうにトウキを見る彼は、いつものダツラだった。 「あの電流のせいで一時的に機能が全部ストップしてたんだけど・・・・何か酷いことされなかった? 」 どうやらクジンとの会話は彼には聞かれなかったようだ。けれども胸の内の暗澹(あんたん)は消えない。  お父様が此処に居る全員を殺すように命じた?  そんな筈無い、間違いに決まっている。  何かきっと別の理由がある筈。  朝霞の様な記憶を辿る。作られたばかりの自分に向けられる(いつく)しみ深い微笑み。その姿を見たのはそれが最初で最後だったけれど抱き上げられた時の暖かさは今でも身体が覚えている。  頬に藍が差し(うつむ)くトウキを支えると、ダツラは熱を与える様にその頬口に唇を落とそうと屈み込む。 「っ! 」 「ふべっ!」 唇が触れる直前にトウキがいきなり頭を上げたため、ダツラは顎を強打してしまうとそのまま顎を押さえて崩れ落ちてしまう。 痛覚の機能は無いのだが感覚的にそういう行動を取ってしまうようだ。 (デリスさん!) 神である父が彼等に協力しているとは思えないが、クジンが持っていた力は本物だった。 だとしたら他の2人も同じ、人では抗う事の出来ない力を持っている可能性はある。そうなれば今一番危険に(さら)されているのはデリスだろう。彼を助けなければ、そして真実を見つけなければ。 わき上がる感情に形振(なりふ)りは構ってはいられない。 まだ(うずくま)っているダツラの視界に届かない距離まで走ると、背に翼を纏い砂丘の崖を一気に舞い上がる。 「あっ!ちょっ・・・・・! 」 思いがけない行動にダツラも慌てて彼を追おうと立ち上がる。 「!!」 だがその足を何かが掴む。爪を立てる勢いでダツラの足を掴んだクジンが血を口の端から流しながら睨みつける。 「動ける?なんで?」 意識が戻って直に撃ったため急所を外していたのは知っていた。 だが、だからと言ってクジンが反撃出来ない様に攻撃した筈だし、まして到底動ける様な傷と出血量では無い筈だ。 「どっちにしろ・・・テメーらは死ぬんだよ・・・・あの御方の作る真の世界を前にしてな・・・・ 」 口に溜まった血を吐きながらクジンが笑みを浮かべる。 「何それ?終末信仰だっけ?僕は興味無いけど」 賞金稼ぎのトップに立つには、余りに似つかわしくない内容の言葉にダツラは侮蔑を込めて返す。 「くっ・・・あはははは・・・・あのガキと一緒にいりゃ・・・真っ先に見れるぜ・・・・ 」 「どういう意味?それ・・・」 いい加減、足を掴んでいる手を振り払おうとしていたダツラはその言葉に動きを止める。 「もっとも・・・テメーはその前に裁きを受けて死ぬだろうがな・・・あの御方の・・・ 」 ダツラの問いに答える事無く、クジンは呪いの言葉を残して絶命した。 「・・・・・・・・・」 八端十字のネックレスを手で(もてあそ)ぶダツラは、彼には珍しく苛立たしげに思案を(まと)めきれずにいた。
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