警告：此方は「天使に捧げる夜想曲」の外伝小説です。 　　　キャラ及び世界観が完全に崩壊している上に第1部を全て読まないと不明な内容になっております。 昔々とある国に王様とお妃様がおりました。仲の良い２人でしたが子供はおりませんでした。 「ちょっと待て・・・」 　はい。 「何なんだこのいきなりの展開はっ！脈絡が無い上に世界観ぶっ壊れ過ぎだろ！」 　外伝と言う事でパラレルな御伽噺を用意してみました。 「ふ～ざ～け～ん～な～！」 「ま、いいんじゃない？楽しそうだし。」 「が・・・頑張ります。」 　では、全員の意見が一致したところで改めて― 「俺の意見は無視かよっ！」 吟じます。古っ・・・・・じゃなかった続けます。 上段から数年が経ち、やがて２人は男の子を授かりました。 「・・・・・ん？アンドロイド間に子供って出来るの？」 王様のダツラがお后様のロカイに尋ねます。 「知りません。あるとすれば子供もアンドロイドでしょうけど。」 　細かい事は気にせずそこは愛の力とでも養子を貰い受けたとでも王であるダツラが他の女性に孕ませたとでも何とでも解釈して頂きたい。 「最後だけ妙にリアルだね。」 　とにかく授かった（一応）人間の子供は世継ぎと言う事もさる事ながらその愛らしさに国中が喜びました。 「白い肌に雪みたいな髪の毛、大きな真紅の目。ああっ絶対大きくなったら美人になるよね～。」 「なっても困りますけど。」 　冷静なツッコミのお妃様とは逆に有頂天の王様は生まれた王子の為に盛大な宴を開く事にしました。 　お城には各界の著名人やら隣国の王族の他に魔法使いと呼ばれる存在も招待されました。 「って魔法使いってカッセキだけ？」 　魔法使いと言うよりはマタギに近い格好をした男を見て王様は問いかけます。 「一応そこの扉の奥にも控えちゃいるけどな・・・・」 「どれどれ・・・・って無理無理！」 　扉の奥に居た面子を見て王様は首を思いっきり横に振ります。そりゃあそうでしょう、後残っているキャラと言えばジギタリスだのロートコンぐらいしかいませんから。 「主要キャラの少なさが此処にきて仇になりましたね。」 「まあ、俺がそいつらの分もやっといてやるよ。」 　その場に居た全員は早々に他の魔法使いの存在を無かった事にしたのでした。　　　 「それはそうと主人。その手に持っている工具は何ですか？」 　カッセキの手には電動ドリルやら溶接用のコテが握られています。 「何って魔法だよ。」 「いや、整形でももっと優しい道具使うから。そもそも魔法じゃないし。」 　珍しくボケの役の王様がツッコミを入れていると一陣の風と共に一人の魔法使いが現れました。 「お前は悪い魔法使いハンゲ。」 　悪い魔法使いと言えばカッセキもどっこいなのですがそこは完璧にスルーしたお妃様が言います。 「あのー。ちょっといいですか？」 　どうぞ。 「本編ですら顔合わせしてない僕等がこんなところで会っちゃっていいのかな～？」 　そこはギリで何とか。パラレルだし。 「そろそろ話を進めてもいいかな。」 　凪の海の様な声で魔法使いはそう言いつつも纏う空気はどす黒い怒りを孕んでいます。 「まったく。こんな大事な祝い事に私を呼ばないとは。そもそもあの子は私の子供。私が作り育んだと言うのに。」 「悪いけど育児放棄した男にあの子をどうする権限は無いよ。何が幸せかはあの子がこれから決める事だよ。それを邪魔するなら喩え神でも血の繋がった親でも僕は許さない。」 　本編さながらの険悪なムードが辺り一体を包み込んだが刹那、魔法使いは喉の奥で笑います。 「まあいい。今日は引いておこう。計画には幾分か時間が足りない。」　 　そこで一度区切ると魔法使いは遠巻きに見ていた人達を一瞥し朗とした声で続けます。 「王子は美しく健やかに育つだろう。純粋さと愛らしさは国中の誰もが褒めた讃える程に。」 　あ、そこは御認めになるんですね。 「当たり前だ。私が作り上げたのだから。萌え要素に一点の曇りもある筈が無い。」 　明らかに本編とは性格が違う発言のハンゲ。いや、実は本編でもこんな事を思っているのでしょうか。 「だが１５歳に成った時に王子は糸紡ぎの針に刺されて死ぬだろう。」 　実際に親だったらその仕打ちはどうだろうかと言う呪いの言葉を残してハンゲは揺らめき消えていきました。 「針に刺されて・・・死ぬ？」 　静寂の広間で漸く王様が口を開きます。 「ええ。そのようですね」 「ヾ(＾。^*))((^Ｏ＾)v」 「意外と余裕ですね。」 　いや実際パニックになっているのですが何時もの癖でボケが出てしまうらく、王様達はいつの間にか泥酔して高いびきをしていたカッセキを叩き起こすと経緯を話します。 「成る程な。また厄介なヤツを敵にしたもんだな。」 　一度背伸びをした後カッセキは唸ります。 「ヤツの魔法の強さと性格の悪さは折り紙つきだ。しかも死の呪いを掛けられたとなりゃあな。」 「どうしますか？国中の糸車を燃やすのは愚考のような気がしますが。」 　畳にちゃぶ台の前というとても王族とは思えない場所で３人は論争を続けていましたがそこで王様がはたと思いついた顔をしました。 「ねえ、僕等は『針に刺されて』の意味をそのまま受け取っていたけど本当にそれで正しいのかな？」 「と、言いますと？」 お妃様の問いに王様は確信を持ったように話出します。 「つまりあの言葉は比喩で真意は別の所にあるんじゃないかな。古くから針は男性器に喩えられて来た代物でつまり『針に刺されて』と言うのは――。」 「いい加減にしろ！さっきから黙って聞いてりゃテメーはっ！」 　罵声と共にデリスが煉瓦を投げつけます。城壁から捥いで来たのでしょうか。 「貴方も早く着替えて来たらどうですか。出番が近いのですし。」 　お妃様に押し込められるようにしてデリスは退場させられます。何より問題なのは現在に至るまで主人公が出て来ていない事でした。 ―明転― 「いや、そこは暗転でいいだろ！」 さて、月日は流れ王子も１５歳の誕生日を迎える事に成りました。周りの人々の、特に王様の愛情を一身に受けて王子は魔法使いの言葉通り愛らしく純粋に育ちました。その素直さ故に普段から絹のドレスを着させられている事など少しも疑問に持たない程に。 「それで此の後お妃様が亡くなって父である王が結婚を迫るんだよね。」 「それは違う御伽噺です。」 　ダツラの本気のプランを霧散させるようにロカイは頚椎に手刀を浴びせます。 「ところでトウキ君、もとい王子は？」 「そこでウサギと戯れていますよ。貴方の趣味で着せたドレス姿で。」 　棘のある一言を投げつけてお妃様は王子を手招きします。―いや、あれは女の子の格好をしていれば少しは魔法使いの目を欺けるかな～って意味で―慌てて弁解する王様の下に王子は笑顔で近づきます。 「お呼びですか。お父様。」 　因みにこの場合の『お父様』というのは王であるダツラの事であってハンゲでは無い訳で、とはいえいくらパラレルであってもハンゲがトウキにとっての父である事に変わりは無い訳でそうなる矢張り呼び名も『お父様』となるのが正しいので・・・・・・・・ややこしい。 「ああっもう。カワイイな～王子は。」 「？？お父様。何故そんなに息を荒げているのですか？」 「それはね、脳に送る酸素量が足りないからだよ。」 「何故そんなに顔が赤いのですか？」 「それはね、血圧と脈拍が異常に上がっているからだよ。」 「何故そんなに前屈みなのですか？」 「それはね、興奮して体が―・・・・ふぶぁ～っ！！」 　再び別の御伽噺に成りかけたのを制したのはダツラの背中に激突した煉瓦、勿論天罰と言うわけではなくデリスによる遠くからのツッコミでした。 「お父様？」 「本編異常に磨きのかかった変態は放っておいても平気です。それよりも糸車には絶対に近づかないように。」 　―ついでに国王にも。―と何時もの注意をお妃様は王子に言います。 　さて王子が庭園でファンタジックに小動物達と遊んでいると塔の一角から不思議な音がしてきます。 カラカラカラ・・・・・・・・・ 　王子は気になりその音を追いかけます。塔の最上階まで上がると小部屋の奥で糸を紡いでいる人がおりました。 「・・・・・・・・今日は。」 「今日は。何をなさっているのですか？」 　フードを目深に被ったその人はトウキを上から下までじっくりと観察した後何故か親指を立てていましたが王子はさして気にも留めずに話しかけます。 「糸を紡いでいるんですよ。」 　そう、王様もお妃様も糸車から遠ざけようとするあまり王子に肝心の糸車がどんなものか教えるのをすっかり忘れていたのです。 とはいえ流石の王子もあれ程聞かされていた『糸紡ぎ』という言葉には敏感に警戒します。 「ところで王子。申し訳ないですがそこの窓を開けてはくれませんか？」 　相手は王族です。このように頼みごとをするなど明らかに失礼千万なのですが、そこは大らかな王子全く気にする様子などありません。 「あれですね。分かりました。」 　少し考えましたが部屋の置くにある窓は結果的に糸車から遠ざかる事になるので快く引き受けたのでした。ところが― 「痛っ！」 　窓に近づいたその時糸車から飛び出した針が王子の脇に刺さります。 「これで予定調和だ。」 　魔法使いはゆっくりと崩れ落ちてゆく王子を見ながら穏やかな笑みを浮かべます。 　あの時は勢い余ってああ宣言したものの糸車に針など付いていなかったのです。そう、糸車は『糸を生み出す為の物』であって『糸を使って縫う為の物』では無いのですから針など無くて当然です。その事に誰一人として気付かなかったのは矢張り『針に刺されて死ぬ』と言う言葉が前に来すぎてしまった為なのでした。 「さあ、戻ろう。」 　魔方使いが床に倒れた王子を抱え上げようとしたその時― 「王子ィーーーーーー！」 　絶叫と共に王様が飛び込んできます。世継ぎである王子がお供も付けずに城内を歩きまわれていたのは国政をお妃様に丸投げして常日頃から王様が王子の傍を片時も離れないからでした。反抗期になったらさぞや鬱陶しがられることでしょう。しかし今日に限ってはデリスのツッコミが入った為出遅れたのでした。 「ああ・・・そんな。」 　倒れたまま目を開かない王子を見て王様は嘆き悲しみます。 「『針に刺されて』って言うからてっきり強姦された挙句そのショックで死ぬんじゃ無いかと思ってたのに。」 　先程デリスが全力で止めた発言を王様はあっさりと吐き出したのでした。 「・・・・・・・」 　魔法使いは一瞬、その手があったか―的な顔をしましたが直にその姿を揺らめかせて消えてゆきました。 　その姿を確認したようにもう一人の魔法使いカッセキが現れます。 「やっぱこうなっちまったか。」 　王様の絶叫に駆けつけたお妃様も合流します。 「何とかならない？！」 　流石の王様も成す術無くカッセキに助けを求めます。 「まぁ、呪いを緩和させる事位なら何とかなるがな。その代わりソイツは100年の眠りに付くぜ、目覚めるその日までな・・」 　何は無くとも可愛い王子の為です。王様もお妃様も依存はありませんでした。 「ついでにお前等城の連中も眠りに付かせておいてやるよ。」 「？　　何で？」 　親切な魔法使いの申し出に王様は首を傾げます。 「別に100年位問題無いってー。」 「アンドロイド基準で話を進めんな・・・・・・。」 　分かってないなぁ、と言わんばかりの王様とお妃様に魔法使いの冷たいツッコミが入るのでした。 さて、グダグダな展開を無視して更に月日は流れ物語は王子が眠りに付いて100年後の世界に移ります。 　侵入者を拒む様な棘に巻かれたたそのお城の奥にそれはそれは美しいお姫様が眠りに付いていると言う噂が世には広まっておりました。とは言え半ば都市伝説的なその話に勇んで訪れる者も無く今日まで誰一人としてその姫君の姿を見たものはおりませんでした。そんな中ある日隣国の1人の旅の王子が訪れました。噂を聞きつけ勇猛果敢に乗り込んだのかはたまた興味本位なのか、酔狂なのか単細胞なのか― 「うるせーっ！！ほとんど悪口じゃねーか！だいたいそう言う展開だろうが！！」 　嫌がりながらとは言え基本に従う辺り本編でもそのヘタレっぷりが窺えるというか、貧乏くじ引き通しが窺えるのでした。 「テメー・・・外伝だからって何言っても良いと思ってんじゃねーぞっ！」 閑話休題― 　ツッコミの勢いのままお城へと乗り込んだ王子は剣で棘を薙ぎ払いようやくお城の奥へとやってきました。 　備え付けられた豪華なベッドには息を呑む程の愛らしくも美しいお姫様が眠っています。 「つーか・・・男、だよな・・・」 　何分100年と言う気の遠くなる様な年月が過ぎており何より眠りに付く前の王子が普段からドレスを纏っていた事もあり、性別が逆転した形で噂が広まっていたのでした。 「・・・・」 　普段ならツッコミを入れて帰る所ですがそこは本編でも微妙な関係を見せた２人、ましてや寝顔を見たとあってはむざむざと引き下がれないのが男の性。 「・・・すれば目ぇ覚ますんだよな。」 　顔を真っ赤にして重要な単語を消えそうな小さな声で言った王子はお姫様、もといもう１人の王子様の前に屈み込みます。まあ、眠っている相手を無理矢理組み伏して唇を奪うと言うなら止めませんが。 「人聞きの悪い言い方すんなっ！元々こういう展開だろうが！！」 　自分で言っておきながらもかなり恥ずかしいのか王子は中々口付ける事が出来ません。呼吸を落ち着かせどうにか間近にまで顔を寄せます。 「ストーップ！！」 　後一歩の所で割って入ったのは他でも無い寝ている筈の王様でした。 「いくらトウキ君が寝てるからって僕の前で堂々と衆人観衆プレイとか・・・」 「プレイ言うな！！！」 　駄々っ子の様に王様は首を振ります。結局の所王子様が心配で仕方が無かった王様は眠りに付かずにいたのでした。お城に誰も訪れ無かった理由の一部もここにあるのかもしれません。 「言ってみれば小説なんて読者から見られている物じゃないですか。」 　今更何を、と此方も起きていたお妃様が恐ろしい発言をかまします。 「デリスばっか何時も美味しい展開で！僕だってトウキ君とキスだの何だのしたいっ！」 「うるせー！だいたいテメーそう言う話に持ってくキャラ位置じゃねーだろ！！」 「成ってみせるねっ！外伝２とかでそう言う関係に！」 　本気で実現しそうなプランをダツラは打ち立てます。 「あの・・・」 　完全に喧嘩に発展した２人に声を掛ける者がおりました。 「・・・へ・・・・」 「えぇ？」 　王子と王様が驚いたのも無理はありません。そこに居るのはベッドで眠っている筈の王子なのです。 「どうなってんだよ！？」 　混乱極まった王子は既に帰り支度を始めていた魔法使いを舞台袖から引き摺り出します。 「あー？だから最初に言った通り100年後のその日まで眠りに付くって。」 「なっる程。つまり今日がその日なんだ。」 「つまり王子のキスがあろうと無かろうと目が覚めていた、と？」 　魔法使いの説明に妙に納得する王様とお妃様とは逆に王子は脱力してしまいます。 「・・帰る・・・」 　安易なオチに最早ツッコミを入れる気にもなれないようです。 「あっれ～。いいの？」 　その足を王様の悪戯気な声が止めます。 「何がだ！」 「だってトウキ君100年の眠りの付いていたんだよ？元々世間ズレしている部分もあるし。国ごと眠ってたから国政もままならないし、他国に攻められたら一撃だね。」 　自分の事は綺麗に棚に上げて王様は意味深な笑みを浮かべます。 「何が言いたい・・」 　王子が身構えます。どう考えてもロクな展開が待ち受けていないのは明白です。 「何より本編同様、まだ悪い魔法使いが倒されていないって事だね。かなり強いし果たして次はこんな風に防げるかどうか・・・」 　大げさに溜息を付いた王様はそこでチラリと王子を見ます。 「君の国ぐらい国力があれば話はまた別だけど。」 「テメー・・・！！最初っからその理由で俺を呼んだな！！」 　口車に乗せられていると分かっていても回避出来ない事が余計の王子を苛立たせます。トドメを刺したのは先程まで考え込んでいたもう1人の王子でした。 「ええっと・・初めまして・・」 　王子はそう言って無邪気な笑みを向けます。今までの話は分からずとも天然なりの考えなのでした。 「・・・ッグ！」 「悪い魔法使いはかなり性格が歪んでるからね。今度こそ本当に衆人観衆プレイとか・・」 　後で独り言のように王様にそう言われ最早王子には選択肢も逃げ道も無いのでした。 　かくして王様のあくどいまでの策略と隣国の強力なバックアップによって国は末永く豊かに発展したのでした。 めでたし　めでたし― 「めでたくねーっ！！」